韓国の山奥の村コクソンの警察官で平凡な生活を送るジョング。村人が予兆なく家族を惨殺する事件が相次いで、自分の娘が奇行を繰り返すようになったことから、祈祷師に唆され同じ時期に村近くの山中に住み着き始めた素性が知れない日本人の男を疑い始めた彼が、徐々に精神的に追い詰められていく様を描いたナ・ホンジン監督作品です。
謎の日本人の男を演じた國村隼が韓国の権威ある映画賞である青龍映画賞で外国人初の助演男優賞に輝いた本作は、監督の過去作である『チェイサー』『哀しき獣』と同じ複雑でダークな世界観ながらスピーディーな展開の犯罪映画だった二作とは異なる、宗教色の強いホラー要素でじわじわと迫っていくような精神的な恐怖を描いています。
「突如現れ新概念と混乱を齎したキリスト」を示唆する主題を村に現れた異邦人と人智を超えた超常現象(と実在的な原因)で表していて、比喩が強い上に異なる問題を一緒くたにしている感もあって現実的な恐怖とまでは至りませんでしたが、得体の知れない展開の前半は文句なし、後半も娯楽スリラーとして十分な面白さを保証できる一作です。
