MikiMickle

DEVILデビル/ラマン・ラーガヴ 2.0 ~神と悪魔~のMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.3
1960年代インド・ムンバイ(元ボンベイ)で41人の殺人事件を起こした連続殺人鬼ラマン・ラーガヴ。彼は1995年に獄死する。
「本作品は彼の映画ではない」というオープニング。


舞台は現代。
エピローグ。2013年。ドラッグをキメた警官ラーガヴァンはクラブで出会った女性シミーを連れ、叔父の家に向かった。ヤクを手に入れる為に。しかし、彼は撲殺されていた…彼は、たまたま居合わせた人物を有無を言わさず撲殺 する。その様子を覗き見る犯人。

第1章。幽閉された男。
2015年。廃墟で、ある男が監禁されている。額に大きな古傷のある男。彼はエピローグでの真犯人。芝居をし民間人に助けだされて外に出る事の出来た男は、森での徘徊中でも殺意を持ち、浮浪者の如く街を徘徊する。

第2章。妹。
男は長年会っていなかった妹の家を訪ねる。恐怖におののく妹とその家族……

全9章で区切られて進んで行くストーリー。
ラマン・ラーガヴに憧れを持つその男ラマンナは警察に捕まり9人の殺害を自供するも、浮浪者の食料目的の戯言だと釈放されてしまう。そして続いていく連続殺人。それを追う悪徳警察官ラーガヴァン。
そして、ラマンナはシミーに徐々に近付いていく。
二人の男の交差する運命…

ボリウッド製作であるものの、その特徴の明るさやダンスは皆無。『追憶の殺人』的な、韓国のバイオレンス・ノワール的な、ダークな作品。

舞台はインドの壊れそうなバラックや廃墟、トタンやベニヤで建ち並ぶ迷路の様なスラム街など。
乾いた痛々しい空気。立ち込める砂塵。飛び交うハエ。匂いたちそうな臭気と腐臭。まとわりつく熱気。インドの負の面を突きつけられる。
一方で、ネオンやクラブのギトギトとした欲望。淀んだオレンジの光。
それらの空気感が相まりながら、物語は淡々と進んでいく。

残虐なシーンの直接的シーンはないものの、なんとも言えない緊張感と重さ。

殺人鬼ラマンナは「神の意思で殺人を犯した」などと供述するものの、それが狂言なのかなんなのかわからない不気味さを纏う。時に無差別、時に私的な理由で殺人を繰り返す男。ギラついた瞳で、拾ったL字パイプを片手に…
彼の目的とは……

サイコパスvsサイコパスという流れの中で、社会の中でいかに狂気とサイコと犯罪が埋もれているのかという恐ろしさを改めて感じた。

大きな傷があるにも関わらず群衆の中に埋もれ、覚えられもせず、印象にも残らないラマンナ。警官という蓑をまとい、本来の残虐性と異常性を隠し持つラーガヴァン。不気味な個性の絡み合いが、インドの空気感と相まって、じっとりとした余韻を残す。

死体が映らない事により感じた“命の軽さ”。そんな中、唯一映った被害者の存在も印象的だった。
MikiMickle

MikiMickle