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21世紀の資本のnickyのレビュー・感想・評価

21世紀の資本(2017年製作の映画)
4.0
"他人より物理的に有利になっただけのことを、他人より優性になったと翻訳する"

『21世紀の資本』という書籍を映像化した作品。ドキュメンタリーというより学校の授業ビデオという感じ。
Lordeの『Royals』から始まる100分。著者ピケティをはじめ、世界各国の経済学者や歴史学者たちが21世紀に至るまでの数百年間を分析していく。
実際の記録映像や『プライドと偏見』『ウォール街』など様々な映画作品が引用され解説が進むので、楽しくはないが中断せずに観ることができた。

"若者世代は楽観的だがババを引かされたことに気がついている" "なぜ教育に5万ドルの借金がいるのか" という指摘は本当にその通りだと思う。さらに付け加えると、私より若い世代の人たちは楽観的ですらないしな。私たちより色々なことを考えて光の少ない先を見ながら必死に生きてんだわ。

個人的に、 "資本家は価格の上がりそうな空部屋を持つ方が発明や建築に投資するよりリスクが低いと考えた" という指摘はなるほどなと思った。ケア労働従事者の低賃金や金にならない基礎研究の低予算とかは地続きだと思う。

ピケティによって提示される解決策は協議の余地がありそうだけど、資本を考え直さなければ待っているのは格差のさらなる拡大と人々の対立、権力者による貧困の悪用、そしてその先には戦争・ファシズムがあるというのは肝に命じておこうと思う。
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