せいか

ワンダー 君は太陽のせいかのネタバレレビュー・内容・結末

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

05/21、Amazonビデオにてサブスク視聴。字幕版。
原作小説は日本語訳の出版後(2015年)間もなくに既に読んでいた作品。そちらのほうがなかなか気に入っていたので、映画化するということでこの映画化作品も気になってはいた。ただ、原作では徹底してオギーの容姿に関して各々に想像させることを徹底していた仕組みが、映画だと当然ながら想像の余地なく固定化されてしまっていた。この点を視聴前から不安には思っていたけれど、やはり、この点に関しては特に小説という文字情報の距離感の取り方が巧みに活きていたと思う。

本作はおよそ原作に則っており、原作同様に各登場人物のモノローグに近い視点も挟みつつ物語の進行度とリンクしながら展開させているのだが、どうしたって内容はショートカットせざるを得ないところがあり、原作既読だとどうしてもそこが気になるというところはあった。原作小説だとオギーという中心人物を軸にしながら各々の人生の悲喜こもごもを深堀りしつつ一つの布を織り上げていく丁寧さがあったのが、本作では必要最低限さで駆け足をしているので、キャラクターの事情も心の動きも自ずと原作と比べるとかなりの駆け足になっている。ただ、映画作品として作り直すにあたってという前提で捉えれば、うまくまとめてはいるとは思う。思うし、十分、それぞれのキャラクターの抱えているものもおおよそちゃんと分かるように丁寧に作られているとも思うけれど、やっぱり、原作と比べて観ざるを得ないものにはなっていると思う。原作がいろいろ映像化するのには難しい要素を抱えまくってて、小説形態が一番合致してるものだからというのもあろうけど(少なくとも、映画にするには難しく、本作のようにやるしかない)。
本作ではいささか物語のきれいさのほうが勝りすぎてて、各々の葛藤とか苦悩が軽やかに流れすぎているきらいがある。視聴にあたってのノンストレスさに工夫されているがゆえというか。そういうところもうまくまとめてしまえているからだというか……。観ててちゃんと分かるようにはなっているんだけれども。原作がいいを抜きにしても、このへんのなんか気になる手際の良さはあると思う。そりゃ悪いよりは良いほうがいいんだろうけど。

映画作品としてつまらないわけでもなく、むしろおすすめできる面白さのある作品だとも思うけれど、個人的にはやはり小説のほうをもっとおすすめしたいというか、できればこの映画を観るよりも前にこそ小説のほうを先に読んでおいてほしいなと思った。

ただ、オギーの部屋とか家の中の見た目に関しては映画というメディアを活かしまくって沈黙のうちに刺しに来てくれたので、映画として観て良かったなあとも思った。
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