かたゆき

ザ・ブック・オブ・ヘンリーのかたゆきのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

彼の名は、ヘンリー。今年で11歳になる一見普通の少年だ。
シングルマザーの母親とまだ幼い弟との三人暮らし、隣に住む幼馴染の女の子クリスティーナが最近ちょっぴり気になっている。
でも、彼はほんのちょっと人とは違うところが。
それは、常人の枠を遥かに超えた高度な知能指数。そう、彼はギフテッドと呼ばれるいわゆる天才少年なのだ。
この歳にして株の取引でかなりの貯蓄を蓄え、学校の成績はもはや大学院生クラス。
そんな彼はある日、重大な事実に気付いてしまう。
「クリスティーナが義理の父親から虐待を受けている!」――。
いくら大人たちに訴えてみても、警察官である彼女の父はその度に巧みな方法で疑惑から逃れていた。
居てもたってもいられなくなったヘンリーは、独自に問題解決への道を探り、それを一冊のノートに書き留めていくのだった。
だが、そんな折、ヘンリーの身体に深刻な腫瘍が見つかり、彼は病院で緊急手術を受けることになってしまう。
もはや事態は一刻の猶予もない。彼の計画を事細かに記した一冊の本を手に、母親が行動を起こすのだが……。
天才少年が記した一冊の本を巡り、過酷な運命に翻弄されるある家族の葛藤を描いたヒューマン・サスペンス。

ベテラン女優ナオミ・ワッツが主演し、『ジュラシック・ワールド』を撮ったコリン・トレヴォロウが監督を務めたという本作、これがなかなかの問題作でした。
ここでぶっちゃけてネタバレすると、主人公であるヘンリーは物語の途中で病のため亡くなってしまいます。
その後、物語はこの遺されたノートに書かれた彼の完全犯罪計画を実行に移す母親へと大きくシフトチェンジしてゆくことになります。
そう、彼は隣人の警察官を密かに殺害する計画を立てていたのです。
いくら虐待をしている父親であっても、これは完全に私刑で犯罪。
なのにそんなことなど構わず、死んだ息子の計画を自ら実行しようとする母親。
誰がみてもかなりダークで陰惨なお話なのに、これを何故かちょっと良い話のように描くところに凄く違和感。
まるで難病ものの感動ファミリー・ドラマのように描いてゆくのです。
僕はモヤモヤとした、なんとも居心地の悪い思いが最後まで拭い切れませんでした。

いやいや、これって色んな意味で倫理的にアウトでしょう。
それにヘンリーが亡くなるシーンも、物語が暗くならないようにだろうけど、かなりあっさりと流しちゃったのもどうかと思います。
最後の無理やりなハッピー・エンドに至っては、あまりに薄っぺらすぎて思わず眉を顰めて観ている自分がいました。
これではなんともすっきりしない後味の悪い映画だったと言わざるを得ません。
ジェイコブ・トレンブレイ君の相変わらずの天才子役ぶりに+0.5点。
かたゆき

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