イルーナ

ひな鳥の冒険のイルーナのレビュー・感想・評価

ひな鳥の冒険(2016年製作の映画)
4.1
「何だ、ただの実写か」
まさにその言葉を体現したかのような作品でした。
打ち寄せては引く波と泡、バックの鳥のシルエット、シギの群れの動き。冒頭はもはや実写としか思えない質感で、その技術力に感嘆の一言です。

本作の主役であるひなの質感や動き。
リアルのシギの動き、羽毛の繊細なふわっふわ感を徹底的に研究したうえで、なおかつアニメ的な表現をさせても全く違和感がないという絶妙なバランス。
いや本当にひなが愛くるしい。ちょこちょこ駆け回る姿、波に飲まれて震える仕草、意を決して巣穴から飛び出す表情などなど。
鳥好きにはたまらない一品です。

さらに物語も、餌の取り方を教えるためにはたとえ波に飲まれようが、けっして甘やかさないという自然番組のようなリアルさ。人間には何てことない波でも、ひな視点からだと津波レベル。
そんなリアルさでありながら、ヤドカリとのやり取りもまた愛くるしい。あのヤドカリも親子なのかな?
あと鳥の貝の取り方もこれで初めて知った。呼吸して泡を出したタイミングを狙うのか。

自然番組とアニメ的かわいさの融合という難題を見事にやってのけた傑作短編でした。
イルーナ

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