MasaichiYaguchi

ナラタージュのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ナラタージュ(2017年製作の映画)
3.5
島本理生さんの恋愛小説を「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲監督が映画化した本作では、映画の内容よりNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の有村架純さんと嵐の松本潤さんとの濃厚なラブシーンの話題の方が先行している感がある。
恐らくこのラブシーンで松潤ファンや架純ファン、更には坂口健太郎ファンによる悲鳴にも似たどよめきが劇場内に起こりそうな気がするが、本作で描かれるのは高校教師と元生徒による禁断のラブストーリー。
高校教師と生徒との禁断の恋愛物というと、古くは1993年の野島伸司さん脚本のTVドラマの映画版「高校教師」があるが、本作の後に生田斗真さんと広瀬すずさん共演で人気少女コミックを映画化した「先生!、、、好きになってもいいですか?」の公開が控えている。
このところ政治家や芸能人の不倫問題が再燃していて、禁断の愛が社会からバッシングされていく中、立て続けにそれをモチーフにした作品が公開されることに不思議な思いがする。
不貞を働けば、別に有名人でなくても家庭が崩壊して、場合によっては全てを失うこともあるので、人は公序良俗に反することを許さない。
その反面、人は背徳の底知れない魅力に惑わされがちだ。
だから、多くの人は現実には出来ない禁断の愛を描く文学や映画に自己投影し、一時の背徳のロマンに浸るのかもしれない。
原作と本作のタイトルである「ナラタージュ」は、筋道を語る「ナレーション」と映画で多数のカットを組み合わせてつなぐ「モンタージュ」という2語からなる造語。
この映画では社会人となったヒロイン工藤泉が大学時代の恋愛を回想する形で展開していく。
泉が経験する高校教師・葉山貴司との一生に一度の恋は、ストーリーの展開に連れて運命的なものに思えてくる。
恋愛の切っ掛けは、葉山が高校生活において行き詰まっていた泉に救いの手を差し伸べたことによるものだったかもしれないが、葉山自体も映画の中盤で諸々追い込まれていたことが描かれる。
ある意味、瀬戸際同士だからこそ、いけないと分かっていながらも愛が燃え上がってしまうのだと思う。
男女の恋心の綾を辿る本作は繊細なタッチで繰り広げられるが、それを演じた松本潤さん、有村架純さんにとって新境地を開く映画になるような気がする。