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神宿スワンのこのレビュー・感想・評価

神宿スワン(2016年製作の映画)
3.0
神宿は今回のムーラボ参戦まで全く知らなかったのですが、いやあかわいいですねぇ。5人が5人ともちゃんとかわいい。個人的には桃の宿担当の小山ひなさんが1番好きになりました。センターを張る一ノ瀬みかさんを筆頭に、みんな映ってるだけで画がもつという印象。神宿のHPでプロフィール写真見たけど、動いてる方がよっぽどかわいいですね。アイドル映画、神宿のプロモーションムービーとしては文句なしです!

ここまで書いてきてもう察している方もいるかもしれませんが、この『神宿スワン』という映画、神宿の5人のかわいさ以外なんにも印象に残らないというある種奇跡のような映画だと思います。プリキュア的な女の子の戦隊ヒーローものと、仮面ライダーシリーズに出てきそうな怪人、つまり特撮的なものとが絡み合ってると思うんですが、序盤に提示される色んな細かい設定とか、全部どうでもいいというか、なくても神宿のかわいさだけで成立する。

女の子の戦隊物というファンタジーを、まあまあスケールの大きい世界観で提示して、めちゃくちゃ大風呂敷を広げてるんですけどそれを回収することは全くなく。この設定をもっと突き詰めれば物語的にも面白くなったんでしょうが、そこがないので物語としての面白さは特にない。メンバーそれぞれが神着化(カムチャッカ=変身)するときに武器を持ってて、『ドニー・ダーコ』とか色んな映画を漢字で当て字してて、それが物語上に絡むこともなく。このネーミングのセンスとか(まんが喫茶FUCK OFF)、『悪魔のいけにえ』ケバブ屋のおっさんとかは、脚本の小林勇貴のセンスだと思うのですが、それと神宿のかわいさがかけ合わさって新しいものが生まれることはなく、ただ画面上に一緒に置いているというだけ。

3つほどうーんと思ったのがあって、1つは神宿の楽曲が使われる回数の少なさ。もっと使ってよかったのでは。もう1つは、アクションシーン。5人とも頑張ってるんだけど、「頑張ってるね」で終わってしまっている。みんなけっこうはぁはぁ言いすぎ。羽鳥めいさんが演じた青の宿の子は、あのキャラ的にもっと強くないといけなくない?と思いました。予算の都合で怪人が1人しか出せなかったなら、最初の登場シーンでもっとラスボス感が欲しかった。なんか、最初出た時ショッカーよりちょっとレベル上なのかな、ぐらいの印象を受けなかったので、そんなに手こずるかと。もっと色々5人で協力し合って技の名前とか叫びながらコンボ技かますとかしてほしかった。あと、「ヤー!」の声がアクション必死です感が尋常じゃなかったので、それなら声出さない方がいいと思った。3つ目は、一ノ瀬みかがなんかやたらと「昔の歌なんてつまらない。未来の歌を歌おうよ」と言うのですが、あれ、なんなんでしょう。多分ここにこの映画が本来目指していた何かがあったと思うのですが。何かメッセージ伝えたげなこのセリフは、完成した映画の中では浮いている印象を受けました。

脚本の小林勇貴が最初の東京上映の時に「目指していた映画と全然違う!」と中山監督にブチ切れしていた通り、脚本で描かれていた、また撮影当初チームが目指していた『神宿スワン』はいま世に出ているものとは全く違うのでしょう。それがかなわなかったのは、製作期間の短さや予算の少なさなど色々あるのでしょうが、まあ、なんにしろもったいないなぁと思うばかりです。武器のネーミングセンスやまんが喫茶FUCK OFFの美術、怪人から飛び散る白濁液など、単なるアイドル映画ではないものを作りたかったんだろうなあというのは良く分かるからです。

言ってしまえば、神宿のファンの人しか楽しめないような映画といえばそれまでかもしれないんですが、観終わった後にそこまで不快感を感じなかったのは、神宿のかわいさをきちんと撮ることにやはり成功していると思うからです。おそらく、編集の段階で当初目指していた映画になることは無理だと判断した中山監督が、自分たちのやりたいことはこの際置いておいて、神宿のかわいさがきちんと分かるようにしようと思い切って判断したからなのでは、と思います。その判断は正しかったと思うし、事実まったく神宿を知らなかった僕が神宿かわいいなーと気づけたのでこは評価していいのではと。
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