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ハート・オブ・ドッグ〜犬が教えてくれた人生の練習〜のwigglingのレビュー・感想・評価

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愛犬を亡くしたローリー・アンダーソンの心象風景を描いた非常にパーソナルな作品。
彼女の音楽作品に触れたことがあるなら、その音楽パートを映像にしたようなスタイルと言えば分かりやすいかな。彼女の包み込むような優しいモノローグで綴る映像詩的な映画です。

描かれるのは、愛犬ロラベルとの暮らし、母や夫の思い出、911以降の世界の変わりようなど。断片的なイメージがモザイク状に紡がれる。

ローリーはこの少し前に夫のルー・リードも亡くしてて、死がすごく身近になっている状態で作った作品なんですね。だから彼女にとってのメメントモリが否応なく反映されている。
彼女の眼に映る社会状況の変容についても、このディストピア化は世界が一斉に死に向かっているように見えたのだと思います。

殺人事件や死亡事故が連日のように報道される一方で、現実の死を実感しにくくなっている現代社会で、突然当事者になってしまった混乱がよく表れています。とても誠実な作品ですね。

最後に流れるルー・リードの曲が心に沁みます。
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