映画の味方あっつマン

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だの映画の味方あっつマンのレビュー・感想・評価

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看護師をしながら夜はガールズバーで働く美香と、左目が見えず工事現場で日雇い労働者として働く慎二は、排他的な東京での生活にそれぞれ居心地の悪さを感じながら、懸命に生きる術を模索していた。そんな二人が、人身事故で山手線が止まった夜に、偶然に出会った——。

渋谷ユーロスペースへ「そうして私たちはプールに金魚を、」を観に行った際に、本作の予告を観て強烈なインパクトを感じていた。そして、先日発表されたキネマ旬報ベストテンにて、邦画一位を獲得していたので、改めて興味を持ち鑑賞することにした。

本作は、大都会東京に住む孤独な男女のラブストーリーだ。この映画では東京で住む息苦しさが、描かれている。しかし、都会って、そんなに排他的なのだろうか? 東京に住み始めてから、特に孤独を感じてこなかったので、この点はあまり共感できなかった。

上京した当初は、最高人口密度の人の多さに驚きはしたものの、1ヶ月も住めば当たり前の風景になるし、地方出身者を大量に受け入れている街なので、逆に懐は広いと思う。

にしても、生きにくい都会を描くときに、決まって土木系の日雇い労働者が出てくるのは、少し、ステレオタイプだ。

また、最果タヒの詩集が原作なだけあって、詩のようなモノローグが随所に登場する。台詞回しも文学を意識したような物が多く、最初は違和感を覚える人も多いと思う(※山戸結希監督が得意とする表現に近い気がする。山戸監督は瑞々しく、本作は鬱々としているので、感情の方向性は違うが)。

後半、2人の恋愛描写は素朴だが、とても綺麗に描かれていた。かけがえのない幸せって、普通の中にこそあるのかもしれない。普通な物が、特別な物に変わることが、幸せなのかもしれない。そんな終わり方だった。

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小規模公開のヒューマンドラマ系の映画って、観るタイミングによって、感じ方が変わってくると思う。この映画は特に顕著だ。自分の場合は、8年前の人生の見通しが悪かった頃に本作を観ていたら、もしかすると、かけがえのない一本になっていたかもしれない。

他にも、若い頃にジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」と言う映画を観たが、あれは逆に時期尚早すぎて、まったく共感できなかった。隣の席にいた年配の男性は大号泣だったので、また歳を重ねてから観たいと思っている。