らんら

君の名前で僕を呼んでのらんらのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

※このレビューは映画「キャロル」のネタバレも含んでいますので、そちらを未視聴な方は避けて下さい

夏に観たくなる大好きな映画。
1983年、真夏の北イタリアの避暑地、
自然と開放感に溢れ人も皆優しく朗らか。青空と吹抜けの建物は観ているだけで爽やかな空気を感じさせます。

観ていて張り詰めるシーンはあっても、ストレスになるシーンがありません。登場人物皆、いい人達なので。

この映画によく出てくる「アプリコット」。
序盤でオリヴァーがその語源と意味について「早熟」「尚早」と話していました。

同年代の子達よりも大人びていながら、初めての恋に悩み葛藤するアンバランスな子ども。まさにエリオのことを表す果実です。

ラストは、電話でオリヴァーから結婚することを知らされエリオが1人、暖炉の前で涙を流すシーンで終わります。あの夏、確かに2人の心は通じ合っていた。けれど夏の休暇が過ぎれば止まっていた時は進み出し互いの立場があまりに違うことに気付かされるのです。しかし、この経験をしたことでエリオはもう"大事なことは何も知らない"子どもではなく、大人になったのでしょう。

同じ同性愛を描いたロマンス映画の「キャロル」(こちらは女性同士だが)とはあらゆる点で対照的なのでこの2作はセットで観て比較すると新しい見方ができます。

季節も環境も対照的だし、「酸いも甘いも経験した大人達の恋」を描いた「キャロル」に対し、この作品は「青く若い者たちの恋」を描いています。
終盤まで周囲の人達に背中を押され2人だけの世界を謳歌していたオリヴァーとエリオですが、最後は互いに別の道を進むことになりました。その「諦め」も、エリオがまだ若かったから受け入れられたのだと思う。

反対に、「キャロル」では、キャロルとテレーズは既に背負っているものが多く、終盤まで周囲の人達に反対されていましたが、最後はそれを全て振り切って2人だけの世界を選びました。

両作品、映像も雰囲気も凄く美しいです。
らんら

らんら