アズマロルヴァケル

ポエトリーエンジェルのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

ポエトリーエンジェル(2017年製作の映画)
3.7
いかにも独特だった青春コメディ

・感想

『詩のボクシング』をする妄想好きな梅農家の青年とボクシングをしている無口な少女の話だったという点と山崎賢人が出演しているという理由で気になって観てみました。

映画の内容は漫画家の押見修造作品を彷彿とさせる内容。どちらかと言えば主人公の玉木は『ぼくは麻理のなか』のようなだらしなさがあるし、ヒロインの丸山杏はちょっと違うかもしれないが『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の志乃ちゃんを思い出させる。

一応青春映画ではあるが、ジャンルはコメディであり、最初は地味に畳み掛けているのですが玉木の純粋な妄想シーンや『詩のボクシング教室』でのやり取りでは笑えるシーンとなっており、特に高校生との強化試合では『詩のボクシング教室』のメンバーたちが率いる『ポエマーズ』と対戦相手の『エンジェルズ』の各メンバーの個性を充分に見せていて素晴らしかったです。

各登場人物のことを書くとキリがないのですが、まず『エンジェルズ』のルイコスタさんという女子高生に至っては前半での詩のボクシングの試合ではなんでか彼女の詩のシーンだけはなかったんだけど、後半での試合ではしっかりどういう詩を見せていたので納得しました。ルイコスタさんに関してはハーフキャラだったのでキレキレの英語で詩を読んでいるんだけど、最後に字幕がないと何言ってるのか分かんないよ!と思ってしまいます。あと、『ポエマーズ』で自称ラッパーだけどキャバクラでボーイをやっている土井浩二さん。実に個性派の俳優である芹澤興人さんが演じてるんだけど、『詩のボクシング教室』の面々が集合しているときに限って山田真歩さん演じる板屋さんにちょっかいをかけたり、同じメンバーの市役所職員の林さんに突っ込みを入れたりと『詩のボクシング教室』の面々のなかでは一番のキレ者なのにも関わらず、後半での『エンジェルズ』での詩のボクシングでは意外にストレートなことを言えてるなぁと思いました。


さて、山崎賢人に関しては実は前半で『詩のボクシング教室』の説明会でたまたま参加させられたキザな青年を演じていて、結局『詩のボクシング教室』に参加することなく、説明会では退屈になった挙げ句携帯で彼女に呼ばれて説明会を出てしまって後半では一切登場しませんでした。なので、もしも山崎賢人が名産品の盗難事件の犯人だったら尚更面白かったのですが、結果的にお笑い要員になっていて少し残念でした。

あとは、『エンジェルズ』にいる小川あんさん演じる杏の同級生の林原さとみさんとヒロインの丸山杏の関係性をラストで描いてくれたらスッキリしたのではないかと思いました。せっかくさとみが
杏に気に掛けている描写を明確に挟んでいるのだから、後半でさとみと杏が詩のボクシングで戦ったあとにラストで何かしら進展がないというのは物語上で問題提起をしていないのではないかなぁと思いました。

それでも、そこそこ豪華キャストながらキャスティングもよく、田舎を舞台にしているという点ではリアリティがありつつも『詩のボクシング』といういかにも面白い題材で人間ドラマを繰り広げている点では結構な良作ではありました。