◆あらすじ◆
酒に酔った若者たちの暴行により父が亡くなり、息子のサラールは父のケバブ屋を引き継ぐ。店の周囲の客層が悪く、酒に酔った若者たちの迷惑行為が後を絶たないため、サラールのフラストレーションは溜まるばかりだった。ある日、サラールは客の若者とトラブルになった際、誤ってその若者を殺してしまう。サラールは隠蔽のためにその客をミンチにして店で使う肉に変えたところ、絶賛される。サラールは暴走して迷惑な客を殺していくようになった。
◆感想◆
客を殺害してミンチにして売るという部分でかなり過激な内容であるが、その背景として移民に対する差別の酷さや若者たちの度の過ぎた迷惑行為など社会的な問題があって、主人公を取り巻く環境の酷さから殺人鬼になってしまう主人公に感情移入してしまう作品になっていました。
主人公のサラールは大学生で課題は卒業論文の提出のみの真面目な人物であり、父が病気に伏したことにより、父のもとに帰ってきます。サラールは父が元気になるまで父の経営するケバブ屋を手伝うのですが、父は息子を大学卒業に専念させるために早々に病院から帰ってきて、ケバブ屋を再開させます。この親子の関係が涙ぐましくて、観ていて2人を応援したくなりました。
しかし、店の営業中、父は客に突き飛ばされ、死亡してしまいます。サラールが悲しみに暮れる中も客たちの横暴は止まりません。ある日、客が勝手に厨房に入りこんだ際に押し合ったはずみで客が高温の油の中に浸かってしまい、死んでしまいます。これがトリガーになりサラールは迷惑な客たちを殺害するようになります。人を殺すことが良いわけがないのですが、客の迷惑行為の酷さからついサラールの方が応援したくなる状況になりました。
殺害シーンは残酷なものになっており、その部分だけ観るとホラー作品として色合いが濃く感じるのですが、殺害シーンが映像として映される回数が少ないためか、2時間という尺の長さからホラー作品の色合いが薄く感じました。
ストーリーの大半はサラールが荒れた客層の中で自身の悪意とそれを留めようとする善意が交錯するドラマの部分が強く、観ていて気持ちの置き場に困りました。ホラー作品として観ていたので、途中から何を観ているのか分からなくなりました。
ラストは正直、唖然としました。なんだが善さげに見えるけど人を殺していることが軽く考えられていて、受け入れがたく感じました。
期待した内容とのズレがあったため、素直に楽しめずに観終わってしまいました。再度観直したいものでもないので、可もなく不可もない作品だったと思います。
鑑賞日:2024年4月25日
鑑賞方法:Amazon Prime Video