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悪人は生きているの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

悪人は生きている(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

小さな楽器店を営む男性、ハン・ビョンド
彼は愛する妻、ユミと娘、ヨヌと共にささやかながら幸せな日常をおくっていたはずだった
しかしある日、彼女は遺体で発見される
生前の妻の様子からビョンドは誰の仕業か悟り、復讐の鬼となる
妻、ユミは大企業、ハンスン・ベンチャー・キャピタルで会長、ペク・ドンイルの右腕とも言えるほど距離の近い側近だった
彼女は会長の裏金口座を生前管理しており検察に不正のバレたペク会長の指示で彼の手下で汚れ仕事を請け負う男性、ソンの手で殺害されたのだった
ペク会長を追うキム刑事もまたユミの死は彼と関係があるのでは、と疑っていたのだが同時にビョンドが何か企んでいるのでは、とも睨んでいた
そしてそれはビョンドの高校時代の同級生で現在は興信所を営むヤクザ、ユン・グヒが突如死に事務所からペク会長を調べていた形跡が発見された事で確信に変わる…
ビョンドは無事復讐を遂げられるのか?
というあらすじ

韓国らしい胸糞展開と暴力に溢れたノワール色の強いサスペンス作品
中盤くらいまではありがちな復讐モノの展開を見せていくのだが後半から更に胸糞悪い事実が明らかになっていくのが良い
そしてペク会長とソンの暴力や殺人の描写も一風変わっていて面白い
ペク会長は自分に掛けられた嫌疑を晴らせない弁護士に激昂し彼をレストランの厨房へと連れて行きカニで殴打し半殺しにする場面が印象的
検察から逃れるべく密航中に同行していた運転手、ギテを自身に及ぶ捜査の時間稼ぎの為だけに躊躇なくハンマーで撲殺し海に投げ捨てるのも巨悪らしさが強く発揮されていた
ソンは会社を裏切り逃亡する女性、パクの車に追突して止めた後にワイパーを車体からもぎ取って刺殺
更にビョンドの娘、ヨヌを取り外したシャワーヘッドで殴打し重傷を負わせる
そんな蛮行を冷淡に行なってきたソンが興信所のユン・グヒを殺した事で彼の手下達に呆気なく銃殺される展開も意外だった

そして前述の胸糞展開
ただ愛する妻と娘の復讐を行なっているだけの様に見えていたビョンドだが真相はより闇が深かった
妻、ユミは実はペク会長と不倫関係にありビョンドはそれを娘、ヨヌが視力を低下させていた為に連れていった病院で知る事となる
ヨヌは白皮症(軽度のアルビノの様な物?)を先天的に患っていた事が判明し、それは遺伝性疾患であると医者が告げる
ビョンド自身もユミもそんな疾患は持っておらずペク会長が白皮症であった事で彼は真実を知る
そういった背景があった為にビョンドはペク会長の乗る密航船に忍び込んで彼を殺した後に入院中のヨヌも絞殺する
自分の子ではない上に妻を蹂躙してきたペク会長の血を引いている事が許せなかったのだろう

誰も救われず終始暗くて胸糞悪い物語は素晴らしい出来だったと思う
ただ一方でビョンドがペク会長を殺した事を面と向かって告白されたキム刑事が何故彼をそのまま行かせたのか、という部分についてはキム刑事の人物像をもっと深掘りして描くべきだったのでは、と感じた
そうする事で彼の権力者が意のままに世に蔓延る事への抵抗が強く示せたはずだからだ
加えて言えばキム刑事が売春婦と思しき女性とセックスしていた場面にしても彼の正義感を薄れさせてしまう余計な物だったんじゃないかと

あとはキム刑事と共に事件の捜査にあたっている後輩の女性刑事に関してもこれだけ頻繁に出すのならばもう少し物語に絡ませて欲しかったというのもある

そういったやや不満な点はあるものの胸糞や暗い作品が好きな人間としてはそこまで期待してなかったのもあり十分に楽しめた
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