菩薩

鉱 ARAGANEの菩薩のレビュー・感想・評価

鉱 ARAGANE(2015年製作の映画)
5.0
最高、至高、至福の60分、究極のノイズ/インダストリアル/エクスペリメンタル/サウンドアート作品。これに関してはもう完全な偏愛により5をつけざるを得ないのでつけるが、はっきりいって1か5かって作品だと思うし、その評価は普段どんな映画を観ているかと言うよりは、どんな音楽を聴いているかによって変わってくると思う。見るからに屈強で短気なおっさんどもが坑道に潜り泥んこになりながら作業する様をただ淡々と観察するだけのドキュメンタリー作品なわけだが、その手の筋の人により分かりやすく伝えるならば、これはノイバウテンの「崩壊」の実写化であると書くのが一番伝わりやすいかと。そこにアルヴァ・ノト、フランク・ブレットシュナイダー、要するにラスターノートーン的なグリッチノイズが重なって来たり、まんま非常階段的な轟音・爆音が延々重ねられ(ってまぁ当然そんなのも全部単なる作業音なわけだけど)、そして瞬間的に4分33秒的な静寂が訪れる。劇場を出る前と出た後では耳に入ってくる音が違うし、可能であれば鼓膜破れる一歩手前の爆音で鑑賞した後に気持ち悪くなって吐き倒したい様な作品。砂煙舞う坑道の奥底でヘッドランプが一筋の光線となり対象物を照らす様、汗と泥にまみれながらテカテカに輝く林檎に齧り付く鉱夫、発破をかけるために突き立てられるドリル、続々と岩石を運び出すためにガタガタと稼働を続ける機材、そんな汚らしくも美しく映るギリギリの生命のやり取り。TG、ジオメトリコ、広重と言えば歌川よりもJOJOが先に浮かんで来てしまう様な方には是非ともオススメしたい、さすがタル・ベーラ筋、只者ではない。
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