どにーだーこ

サーミの血のどにーだーこのネタバレレビュー・内容・結末

サーミの血(2016年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

面白くはないが色々考えさせられる映画だった。
まず、どの国においても人種差別があるのは分かっているつもりだったが、ラップランドというトナカイと共に悠然と暮らしているイメージのある地域の民族でさえ差別されていたことに驚いた。スウェーデンの学校の教師は「あなたたちは脳が小さいから文明に適応できない」と「研究結果に基づいた事実」を平然とのたまい、それを信じて疑わない。優性民族であるスウェーデン人は劣等民族であるラップランド人を守ってあげましょう。なんて驕った正義感なんだろうか。
ただこの映画はそういう差別されていたサーミ人の悲壮感を淡々と見せているのではなく、その運命に果敢に立ち向かう一人の少女のたくましさにフォーカスされていたので涙をそそるとか感動するといったテイストではない。むしろ、エレ・マリャという少女は都会に出たいがために服や金を盗み、本名を変え、惚れた男の家に凸というストーカーまがいのことをするなど、生い立ちの悲惨さをはるかに上回るアグレッシブさに圧倒されてしまう。自分の理想を実現するためなら妹を罵倒し親の形見を売って学費に変え、故郷と家族を捨てて都会で家庭を築き数十年後に妹の葬儀で故郷に戻っても頑固な態度、遺体の妹に「自分を許して」というシーン、どうしても所々で自己中心的さを感じてしまい共感はできなかった。でもそこまでしないと変えられない運命だったんだなあと思うと、出自がいかに重要な意味を持つのかを改めて考えさせられた。