第29回東京国際映画祭にて。
突如失踪した姉の行方を探して旅に出た少年サラワクの成長を描くロードムービー。
淡いグラデーションが美しい空と海、穏やかな波の音。風景の魅力は満点。
一人飛び出すサラワクくんの怖いもの知らずの無茶が微笑ましく、血気盛んな彼とは対称的な物語のゆったりとしたテンポとのギャップが心地いい。
途中で出会う都会から来た女の子がサラワクのお弁当をほとんど食べてしまったり、せっかく村を離れたのにもとに戻ってきたり。そんなこんなで、前半は、「これは、もしかしてインドネシア版『リアリズムの宿』になるかも」と思ったりしてワクワクしたのだったが、後半、ストーリーの核心が見えてくると、ありきたりな感じに落ち着いてしまった。
要は、妊娠をめぐる女性映画なのだけど、覚悟を決められない男たちの不甲斐なさ・無責任への怒りが弱く、女性たちがあっさりと許してしまったかのように思えて、物足りない結末になってしまった。時折挟まれる十字架のイメージは、サラワクたちが異教徒として迫害されていることを表しているのだろうか(インドネシアは国民の大多数がイスラム教徒)。にしては、葛藤がよく見えなかったけども。