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ハローグッバイの8bitのレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
3.7
友達、家族、恋人…。
この世界には様々な言葉があふれているけど、人と人との繋がりを表す言葉が少なすぎる。

いつも学校やLINEで「うん、全然大丈夫」とか「いつでも相談にのるよ」とか「うちら味方だから」とか、そんな上っ面の言葉だけでつるんでいる存在。
時には本音でぶつかり合いながらも、お互いを信頼し、心許しあえる存在。
このふたつ、正反対の意味を持つ存在なのに、どちらも「友達」という言葉に括られてしまう。

人と人との関係ってそんな単純な言葉で片付けられるものじゃないのに。
この映画はそんな素朴な疑問を投げかけてくる。

クラスメイトでありながら、お互いほとんど接点のなかったふたりの女子高生と、認知症を患った老婆が偶然に出会い、同じ時間を過ごし、同じ歌を歌った。
見ず知らずの他人ではなくなった彼女たちの関係をいったいなんと表現すればいいのか。
観終わってからずっと考えていたんだけど、残念ながら当てはまる言葉が見つからなかった。

すでに老婆はふたりの存在を忘れ、彼女らも明日から学校ではお互い話しかけることも無いのだろう。
でもあの歌だけは心の中でしっかりと繋がっている。
会話がなくとも、ふたりの間の何かが変わったことがわかるラストシーンの余韻がとても清々しかった。


一見快活で楽しそうに見える女子高生グループの実態とか、孤独な優等生の抱える闇とか、認知症のシビアな現実などの描写を盛り込みつつ、
老婆の初恋の人さがしのちょっとしたミステリーっぽさもあって、女子高生と老婆、それぞれにとっての〝青春映画〟になっていました。
泣けるんだけど必要以上に感傷的ではなく、あくまで「友情」の物語であり、タイトル通りの「こんにちわ」、「さようなら」の物語になっていたのも良かったです。
老婆を演じた、もたいまさこさんの演技にはとにかく心打たれました。
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