猫脳髄

サファリの猫脳髄のレビュー・感想・評価

サファリ(2016年製作の映画)
3.6
※本作の「あらすじ」は非常に偏っており、注意を要する。少なくともそんな偏頗な作りのドキュメンタリーではない。

アフリカ大陸の某国(明言はされないが、旧ドイツ領ナミビアである)で展開されるハンティング・ビジネス。老若男女を問わないハンターたちや、「牧場」のオーナー夫妻らのモノローグやディアローグを挟みながら、ハンティングの実際を飾ることなく淡々と見せつける。もちろんそこには獲物の解体シーンも遠慮会釈なく映し出す。

当初は、ハンターたちの残忍さや欲得ずくのオーナーが告発されるのだろうと思い込んでいたが、意外やハンターたちは獲物の死に対して自覚的で、責任感と敬意すら抱いてその解体まで立ち会う。また、動物や自然保護のために「人間が多すぎる」と言ってのけるオーナーも、どこか達観したところがある。

思えば、動物の生死に日々向き合っている彼らと、テレビ画面に向かって「残酷だ!」と勝手なことを言いつつ(例えば)フライドチキンをつまむ我われとは、根本のところで意識が異なるのだろう。命を屠ることで死を自覚する。「狩り」とは自然そういう機能を備えていたのかもしれない。

気になるのは、牧場などの従業員である黒人たちの語りが採用されていない点である。カメラを真っ直ぐ見据え、ある時は獲物の肉を貪り食うような描写がインサートされる。彼らから言葉を奪った(語り得なくした)のは、白人の雇用主かそれとも製作陣か。その割り切れなさは残る。
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