せんきち

13th 憲法修正第13条のせんきちのレビュー・感想・評価

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)
4.2
Netflixの傑作ドキュメンタリー。


現在のアメリカの暴動をみて「こんなことをするから、差別やめろなんて意見が聞いてもらえないんだ」と思った方に是非観て欲しい。



4年前に制作された、このドキュメンタリーは今のアメリカでの暴動を理解するための立派な教材なのだ。



「アメリカの人口は世界の5%。しかし世界の全受刑者の25%がアメリカにいるのです。異常です」衝撃的なコメントで始まるこのドキュメンタリー。南北戦争後、奴隷解放された黒人はどうなったのか。奴隷という有力な労働力を失った南部は合衆国憲法修正第13条※の抜け穴をついた。犯罪者であれば奴隷労働が可能なのだ。ささいな罪で黒人達は大量投獄されていく。これが刑務所ビジネスの始まりなのだ。



※奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。



更に『國民の創生』という映画史に残る傑作にして差別主義のプロパガンダとKKKの復活、公民権運動、麻薬戦争などなど数々の運動、政策が黒人のパブリックイメージを作り上げていく。悪夢のようであるが現実である。


更に終盤には連続して起きる無実の黒人を警察官が殺害するシーンが。これを見れば現在の暴動の理由が分かる。全て地続きで起きてる問題でかつ誰も責任をとらず問題を解決しようともしてないのだ。その上で耐えろだの、冷静になれだの、時を待てだの言われたらキレるだろう。勿論、今回の暴動にコロナ対策の不備(低所得の黒人層の方が死亡リスクが高い※)もプラスされてるのだろうけど。


※テレワークの出来ない職種が多いこと 黒人がマスクをするとそれだけで銃撃されるリスクが増すことなど


暴動や略奪を肯定する気はない。しかし、その怒りの原因は理解してやらないかんと思う。社会的不正義は必要悪だと冷笑する人間にはなりたくないからだ。



本作を観た後で『それでも夜はあける』『グローリー/明日への行進』『ブラッククランズマン』『私はあなたのニグロではない』とか観て欲しい。より理解しやすくなると思う
せんきち

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