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娘よのmakoのレビュー・感想・評価

娘よ(2014年製作の映画)
4.2
《婚礼の当日ー花嫁となる10歳の娘を守るため、母は命を賭けた脱出を決行した》
◎85点

福山駅前シネマモードで、7/22~25に「ジェンダー映画祭」があり、その時に鑑賞。
この日は、この後にもう一本観ました。

◆あらすじ
世界最大の山岳氷河地帯を抱き、パキスタンとインド、中国との国境付近にそびえ立つカラコルム山脈。そこには多くの部族が割拠し、それぞれが部族の掟を厳守しながら、お互いに微妙な均衡関係を保っていた。ある日、部族間で衝突がおき、その代償として求められたのは、老部族長と幼い娘との婚姻だった。その事実を知った母親のアッララキは、幼い娘を守るために、部族からの脱出を決心する…。


パキスタンの映画は、アメリカ制作のドキュメンタリー映画『ソング・オブ・ラホール』しか観ておらず、本作が私にとって実質初パキスタン映画になりました。

ジャケットやあらすじから予想したのは、シリアスで重い感じなのかなと思っていたけど、観てみると重めな内容ながらもユーモラスな感じやサスペンス要素もあり、ちょっとしたロマンスもあるロードムービーでした。
母と娘を追う者たちとのカーチェイスがあったりと、緩急のバランスのよい映画でとても面白かったです♪
このカーチェイスは世界で最も標高の高い道路で行われたそうです。

映像が美しく、パキスタン山岳地方の厳しくも雄大な風景、色鮮やかな衣装や母娘を助けることになったソハイルが運転する極彩色のトラックも見どころ。
あと、音楽も良かったです。

印象的な構図も幾つかあり、特に印象的だったのは屋内の中央の太い柱の線を境に画面を2分割しているシーン。左手は食事の支度をするアララッキ、右手は夫らしき男が座っている。このシーンからこの夫婦の関係がなんとなく感じられました。

少女二人が結婚や子供はどうやったらできるのかという秘密めいた話をしていて、それがその後の少女の身に起こることして描かれていて見事だなと思いました。
少女たちの話は、子供らしく可愛らしい話だが、実際はそんなものではないことは大人なら分かる。
そしてアララッキ自身、娘と同じような境遇であったため、同じ事を娘にさせたくない一心で命懸けの脱出を婚礼の当日に決行する。

ここまで書いてあれだけど、あまり情報を入れずに観て頂きたい。
予想以上に面白いです♪

※追記
児童婚ということで古い時代の物語かと思ったら携帯電話がでてきてビックリ。製作年は2014年になっています。パンフレットに監督のメッセージがあり、その中で、毎年1400万人の少女が強制的に結婚させられている事実は受け入れ難いと。数の多さにびっくりしました。今でも行われているのかと思うと心が痛くなりました。


監督・脚本・制作は、アフィア・ナサニエルさん。女性の方で、本作が長編劇映画監督デビュー。
本作は、2015年米国アカデミー賞外国語映画部門のパキスタン代表作に選出。
他にもいろんな映画祭で観客賞、特別賞、最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。
この映画は構想10年で、パキスタンのある村で起こった実話に触発されたそうです。

アララッキ役は、パキスタンの名女優サミア・ムムターズ。とても美しく、固い意志を秘めた美貌の母役にピッタリでした。
娘のザイナブ役は、サーレハ・アーレフ。本作がスクリーンデビュー作。ウルドゥー語版セサミストリート「Sim Sim Hamara」のKiran役でデビュー。可愛らしい子でした。
トラック運転手ソハイル役は、モヒブ・ミルザー。母娘の逃避行を最初は拒みながらも事情を知り、危険を冒し母娘を助ける。なかなかのハンサムで役にもピッタリでした。舞台出身で、人気実力を兼ね備えたパキスタンNO.1男優だそうです。

ジェンダー映画祭について…
5人のオピニオンリーダーがセレクトしたジェンダーをめぐる5つの映画が上映。
本作をセレクトしたのは北村紗衣氏。
他4本は、
『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』(武田砂鉄氏)
『エマ、愛の罠』(能町みね子氏)
『あの子は貴族』(山本愛生氏)
『プロミシング・ヤング・ウーマン』(ライムスター宇多丸氏)

本編終了後に解説動画があり、その解説も聴きごたえがあり参考になりました。
その中で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に似てると言われている、というのを聴いてなるほどなと思いました。
ただこの日、映画終了後に解説動画がなかなか始まらず観客5人中3人が退席されました。多分上映後5分くらい待ってたと思うけど、辛抱たまらず後ろに座っている男性に、私「このあと解説動画がありますよね?」と声をかけたところ、「ありますよね」と男性。「私、受付に言いに行ってきます!」と言い受付に。どうも忘れていたようでした。
素敵な企画なのに、少し残念でした。
解説動画も込みで観に来てるから、退席された3人は残念だなと思い、その事はスタッフさんに言いました。
パンフレットが販売されていたので買いました。このパンフレットも買って良かったです。本作の事はもちろんですが、パキスタンの国勢・宗教・社会・文化について知ることができ、より本作を理解することができました。



日本語字幕: 松岡葉子
観客 5人
劇場鑑賞 #82
2022 #93
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