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亜人の2049のレビュー・感想・評価

亜人(2017年製作の映画)
1.0
原作既読済み。原作は大傑作と言っていい素晴らしいコミックだ。コミックの実写化というと、以前なら「またか…やめとけばいいのに…」という印象を誰もが持ったものだが、個人的には佐藤信介監督による『アイアムアヒーロー』が傑作で大成功と言える前例が出来たおかげで、今作への期待も高まっていた。本広克行が監督と知るまでは。

正に原作レイプだ。原作はそれぞれの主要キャラのドラマがしっかり描き込まれている。しかし、映画版はそれが全くない。アクションに重点を置いた結果だろうが、全く感情移入出来ないし最早どのキャラクターも原作とは別人になってしまっている。映画においてキャラクター描写というのは非常に重要だが、どのキャラクターもどんな人物なのか一切描かれないせいで、そもそも"キャラクター"不在の映画になってしまっている。入れ物だけだ。永井という、主人公にしては特殊な人物と、佐藤という死をばら撒く男の攻防が魅力の原作だがそれぞれのドラマがあるからこその面白さだ。目頭が熱くなり胸が滾るような展開が原作には確かにある。それも何度も。

アクションが良ければまだ観れる。しかしアクションもとにかく酷い。リアリティのない軽薄な、ただ格好つけただけのアクションに辟易する。原作のアクションは驚異的な画力に裏打ちされた表現力とリアリティ、そこに不死身の亜人とIBMというSFが加わることによってまさしく新次元のアクション描写へと昇華されている。今作はその魅力も全て削ぎ落とされている。

綾野剛の大仰な演技も酷いし、本当にいいところがない。毒ガスが入ってるケースのデザインは80年代のセンスで目を疑う。そもそもそんな危険な毒ガスが何故指紋1つで入手出来るのか。とにかく何もかもが酷い。見所があるのは川栄李奈のアクションくらいだろうか。
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