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光のsymaxのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.5
"心臓なんだよ…動かせなくなっても、俺の心臓なんだよ…"

視力を失いつつあるカメラマン中森雅哉…視覚障害者向けに映画の音声ガイドのモニターとして参加し、そこで尾崎美佐子と出会う。

美佐子が作るガイドに"主観が入りすぎている"とぶっきらぼうに突き放す雅哉…


どうやら私は、河瀬監督との相性はイイらしい…

初めて観たのは"朝が来る"…ドキュメントタッチの画作りに違和感なくすっぽり入り込み、さめざめと涙を流す自分がいるという稀有な経験をさせてくれた河瀬監督の過去作を紐解いてみたいとの思いから鑑賞です。

健常者である美佐子と視力を失っていく恐怖と絶望と戦いながら生きる雅哉の関係性が徐々に縮まっていく姿が描かれていますが、私的には単純にラブストーリーとして捉えることは出来ませんでした〜それは余りに唐突すぎるキスシーンの影響があるかもしれませんが、男女の愛というよりもっと大きく、深い関係性を描こうとしたのか?との思いを持ちました…上手く言えませんけど…

美佐子と雅哉、美佐子と母、劇中での映画の主人公重三、それぞれの目指す先に色々な想いが詰まった"光"があり、単に恋愛映画と片付けられず、鑑賞後も色々と引きずられてしまいました。

久しぶりにちゃんと観た永瀬正敏の演技は凄い…
視力と共に失っていくモノへの惜別の想いがセリフだけではなく全身から滲み出しているかのようです。

映画を言葉で表現する事の難しさやもどかしさを感じる一方で、声だけで深い情景を魅せてしまう樹木希林の凄まじさに感動したのでした。
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