映画の味方あっつマン

光の映画の味方あっつマンのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
-
視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作している美佐子は、弱視のカメラマン雅哉と出会い、彼が撮影した夕日の写真に衝撃を受ける。やがて雅哉の症状が悪化し、視力を失っていく——。



いま日本で最も「カンヌ国際映画祭」に好かれている監督の一人である河瀬直美の新作。

以前の「殯の森」や「萌の朱雀」「2つ目の窓」と比べると、最近の「あん」や本作は、ずいぶん分かりやすくなったと思う。作風が変わって少し寂しいような気もするが、「人と人の関連性」という河瀬監督の軸のような物は、変わらずにある(※作風が変わったというより、脚本を前よりしっかり作る様になっただけかもしれない。実際にどうかは分からないけど)。

本作「光」テーマは「音声ガイド」。興味本位でDVDやBDを音声ガイド版で観たことはあるが、この様な工程で作っていたのかと改めて驚いた。そして、音声ガイドを作る方々の映画への愛が、この作品を通して伝わって来た。

また、「光」というタイトルなだけあって、光の表現がうつくしい。顔を照らす夕日の光、ガラスを通して現れるプリズムの光、森の木の間から見える太陽の光、写真を通して感じる光、映画館で客の顔を照らすスクリーンの光…。それだけに、雅哉の“光”が見えなくなる絶望が際立って伝わってくる。

“言葉”が“光”の代わりになる音声ガイドの仕事は、とても大変な仕事だと思う。

雅哉の最後の写真が物語っていたのは、雅哉にとって、美佐子は最後の光ってことなんだろうか。とにかく、うつくしい映画だった。