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最後の家族のbのレビュー・感想・評価

最後の家族(2016年製作の映画)
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ベクシンスキー役のアンジェイセヴェリンといえば昔シルバーグローブというSFで主人公役として出てた人で月面で駅弁ファックかましたりして怪演を見せてくれた人。だいぶお爺ちゃんになった

あえて映画本編外のことを書いておくと、画集に載ってたことのなかにトマシュ病みすぎ逸話としてあったのが彼女にふられた際に俺は自殺するぞ!みたいなことを書いた紙を大量にコピーしてそれを町中に貼って騒ぎを起こしたことが彼が20過ぎてぐらいのころにあったらしく、そんな騒ぎを起こして気を引こうとするあたりから見てもやはり情緒不安定でこの親子間の間には埋めれない溝があったようにみえる
トマシュ本人は親のことを崇拝してたらしい、でも実際のところどう考えてたのか
仮に自分の親がこんな普段から人当たりよくてニコニコしときながら家で神妙な顔してやばい絵ばっか描いてたらどう接したらいいかわからなくなってくる。幼少期はなんだかすごいと思えても
ベクシンスキーとパトロンとの手紙のやりとりの中で「有名女優(名前書いてたけど忘れた)に絞殺される妄想をよくする、私にはマゾヒズム的願望がある」といった倒錯的な欲望を赤裸々に伝えてた通り、その辺が顕著だった性的でなおかつ死のイメージが後に比べるとかなり強かった初期のころの絵画や大量のドローイングを幼少期のトマシュは見てるはずで崇拝しつつも精神をむしばまれていたんじゃなかと想像する

そのほか映画本編にはないものとしてyoutubeで昔見た動画で彼がまだ生前のころ個展にベクシンスキー本人が来て大勢の幼稚園児から小学生ぐらいの子たちが彼の周りに群がって「わー、べくしんすきーだー!」みたいな感じでサイン求めてた光景があってこんな芸術家ほかにいないなと驚いたのを覚えてる。国内だともっぱらネットミームで3回見たら死ぬ絵だとかネトウヨ層になぜか人気とか何かと俗っぽいイメージがついてただけに
評論家からは「こいつの絵は漫画っぽい」とか評されたこともあったらしいけど、それでもあんな小さい子たちにまで人気出る芸術家って早々いない
見た感じこの映画と同じ晩年の時期だったのでちょっとでもいいからそのへんの光景を作ってほしかったな

いろいろ見直すとなぜ彼が建築業に嫌気がさしてあるころから芸術家の道にいったのかというと彼の小さい頃の戦争体験を考えれば割と簡単に想像がつく話だということに気づいた
戦争によって簡単に崩壊する建築というものの脆さに気づいてしまったからこそ絵を描く(絵の中に建物を建てる(時に家、時にバロック建築))という、ついえることのないイメージの世界に情熱をそそげたわけで。一家の主で元建築家でもありながら一戸建てが欲しいような素振りとか公営住宅住まいへのコンプレックスみたいなのが見て取れないこと、これが長い間不思議だったんだけど過去の発言含めて考えればなんだか腑に落ちる
どこかの地球外惑星の光景を全て描ききったような、どうかしてるんじゃないかという異常な枚数をこの世に残してるのも将来また戦争が起きてもできるだけ多く自分の絵(建築)が残ってほしいという思いからくるものということが言えそうだし、この世という地獄をサーフィンするために結果として無言の絵画群を残すことになったともいえる
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