柏エシディシ

デ・パルマの柏エシディシのレビュー・感想・評価

デ・パルマ(2015年製作の映画)
3.0
間違いなくアメリカ映画史に名を残す巨匠でありながら、スピルバーグ、スコセッシら同世代の盟友たちに比較するとその評価が近年めっきり聞かなくなってしまった様な印象のデパルマのドキュメンタリー、というよりはインタビューフッテージ。
聞き手は意外な気もするノア・バームバック(とグウィネスパルトローの弟)

よくある近親者や関係者の談話が挟み込まれるドキュメンタリーと違って、デパルマ先生が語り倒す体裁なのだが、これがまたすこぶる面白い。
「映画監督の全盛期は30代から50代」と自身へのアイロニーをぶっちゃっけるのをはじめ、過去作品の世評への本音を吐露したり、出演者たちのゴシップや裏話もてんこ盛り。
ジャーナリストや一般的なインタビュアーでは無く、同業者相手だからこそ引き出せたものだと思う。

しかしつくづく思うのだが、「デパルマカット」と呼称される印象的な画面作りが、彼の映画を知らなくとも、私たちが普段観ている映画や映像作品全般に悉く模倣され引用され、そうと知らずに見ている事の多いことか。
改めて本作を通しても確認が出来る。
そして、あの作品のあのシーン!と仮に映画そのものを観たことが無くても、知っているシーンのなんと多い事か。

極端な話、映画なんて2時間あろうが3時間あろうが、その中のある数分間、ある一瞬を人々の脳裏や歴史の中に刻み込められるかどうか、って事なのかもしれない。
ジャズのレコードを聴いて、数秒の極上のインプロヴァイズを聴くために、10分以上の演奏を聴くかの如く。

デパルマの映画はそれがあまりにもスタイリッシュであったが為に、
一種クリシェと化してしまったというか……変わらない作家性は保ちつつも柔軟に時代を乗り越えていったスピルバーグとの比較はなかなかに面白い。

根強いデパルマファンにはもちろんだが、彼の作品は「アンタッチャブル」か初代MIしか知らないという若い映画ファンも楽しんで観られる事と思う。
柏エシディシ

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