てっぺい

火花のてっぺいのレビュー・感想・評価

火花(2017年製作の映画)
4.0
厳しい芸の道を目指した若者の悲哀が、終始散りばめられた笑いで包み込まれる不思議な感覚に陥る。ラストに込められた、“散っていく火花への原作者の思い“にも注目。
単行本・文庫本の累計部数は300万部を突破、第153回芥川賞受賞作品の映画化。監督は板尾創路。釜山国際映画祭出品作品『板尾創路の脱獄王』('10)で第19回日本映画批評家大賞・新人監督賞を受賞。
長い年月をかけて芸の道を進んでも何も変わらない生活、成功していく後輩、なかばで道を諦める仲間、実力がありながら売れる術を取れない先輩、そして自分。こんな芸の道の悲哀がとてもリアル。自分も仕事で何人も同じ境遇の人達と接しているだけに、最中に少し胸が締め付けられるような思いも。でも、芸人の話ならでは、笑いが至る所に散りばめられていて、事実ほど悲壮感を感じさせないのがこの映画の不思議なところ。他の映画に出来ないこの映画の強いオリジナリティだと思う。
大きな花火が打ち上がった後の、儚く散る火花。エンドで語られる“消えていく者がいないと、成功する者もいない”とは、原作者が実際に多くの同じ境遇の人を見てきたからこそのメッセージだったと思う。
主演の2人の息もピッタリ。会話も違和感なくとてもやり取りがナチュラルで心地よかった。こと菅田将暉の、ラストの舞台でのシーンは圧巻。見ている者から笑いと涙を一気に引き出す様は、彼の力が存分に発揮された、この映画の揺るぎない山のシーンだったと思う。
難しいところだけど、中盤少し中だるみ感があったので、テンポを上げるか、抑揚をもっとつけられたら良かったと思う。
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