中島何某

ハウス・ジャック・ビルトの中島何某のネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2020年 33本目

建築家に憧れる技師であり、殺人鬼でもあるジャックの半生が、“五つの出来事”を通して語られる物語。
本編は彼と謎の男ウェルギとの会話が大きな軸となっている。
自身の強迫性障害に悩む彼は、殺人によってその悩みを解消していた。
ウェルギはそんな彼の話を痛烈に非難しながらも、話を引き出していく。
殺人を正当化しようとする彼の様子は全く以て同意しかねるが、二人の会話は何か芸術的でかつ高尚に感じた。

また、彼は殺人の傍ら、自ら買った土地に家を建てようとしていた。
しかし固有の材質を見つける事が出来ず、何度も建てては壊していくのだ。
悩んだ末、ウェルギの助言によって誕生したあの建築は、“死”の体現である一方で“美”の感情を抱かせる物であった。

そしてダンテの“神曲”を彷彿とさせるラスト数十分の映像は、おどろおどろしく、尚且つ美しかった。
また、古代ローマの詩人ウェルギリウスがウェルギのモデルなのは一目瞭然である。
しかし、本作でダンテに当たる筈のジャックが天国を覗くに終わった事は自明の理ではあるが、私に一種の哀愁を感じさせた。

ショッキングな映像もあるが、映像技術や登場人物の台詞一つ一つに芸術性を含んでいる本作は間違いなく傑作であろう。
しかし、私自身まだまだ未熟であるため本作の内容を真に理解出来ていない、惜しむべき点はそこのみである。