映画おじいさん

地底の歌の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

地底の歌(1956年製作の映画)
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ヤクザに興味津々の気の強い女子高生が、まんまとヤクザに騙されて、成田まで連れ出されて売り飛ばされる一連のシークエンスが素晴らしい。
よく台詞では「ヤクザに売り飛ばされるぞ!」とかあるけど、実際に売り飛ばされるさまを描いているのは珍しいのでは。

売り飛ばす薄らバカなヤクザ・高品格のやり過ぎ演技も悪くなかった。

裕次郎はもちろん、全体的(特に前半)に大根な役者が多く、そのことで逆に独特なムードが生まれていて凄く良かった。
裕次郎は主役ではなくこの程度の役が丁度いい(映画出演三本目)。喫茶店で女子高生に武勇伝を鼻をふくらましながら話すところとか凄く良かった。

裕次郎の姉が過去に一目惚れした女だと分かった名和宏が、強引ながら無理矢理ではないというやり方で手ごめにする時に、中庭に立った灯籠がアップになるのには柔かな苦笑。アレのあからさまな象徴過ぎて。

主人公・名和宏がハンサムヤクザな設定だけど今の目で見るとちょっと野暮天。そこも逆に映画のスパイスになっていた。

名和宏の「ヤクザなんて義理や人情と言うけれど、本当のところは損得勘定の駆け引き」みたいな台詞が象徴するようにヤクザをクールに描いていないのが素晴らしい。

体面ばかりでダメなヤクザの親分役をやさせたら、やはり二本柳寛はピカイチ。死んでせいせいしますよね!

「おかる」という博打イカサマ法を初めて知った。

どこがと言われたら困るけど、上記したように普通のヤクザものとは違う雰囲気のある意外な拾い物でした。鈴木清順によるリメイクと合わせて、また観たいです。

*冒頭の錦糸町繁華街で、3年間公開延期された小林正樹の問題作『壁あつき部屋』のデカい看板を発見。