「自分の頭が食われている時に、相手に道理を解くことはできん!」
第二次大戦でヒトラーの猛攻に屈することなく、名演説で国民を鼓舞し、首相としてイギリスを率いたウィンストン・チャーチルの物語。
この映画では、前首相のチェンバレン辞任後に首相に就任し、ダンケルク作戦を決断するまでの短い間を濃密に描いた作品。期間でいうと1940年5月の一ヶ月間というところでしょうか。
皆さんも書かれているように、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」の一ヶ月前を描いた作品ということになります。
名演説で国民的な人気を誇るチャーチルですが、頑固で偏屈なキャラクターでも有名。映画では、冒頭、リリー・ジェームズ演じるタイピストのレイトンに厳しく当たるエピソードだけでそれを表現しており、巧みな演出でした。
ドイツへの徹底抗戦を訴えるチャーチルですが、同じ与党内からの支持は薄く、ドイツとの和平交渉を訴える同じ与党内のハリファックス達の意見に屈しそうになります。
今でいうとプーチンがウクライナを蹂躙し、そのままの勢いで自国に迫ってきているようなものですから、かなり恐怖を感じる状況だったでしょうね。
演説で国民を鼓舞し、ロシアとの徹底抗戦を続けるウクライナのゼレンスキー大統領とこの映画でのチャーチルのイメージはかぶります。
映画では、追い詰められたチャーチルが地下鉄の中での市民との対話で徹底抗戦への確信を得て、有名な” Never Surrender” の演説を経てダンケルク作戦につながるというエンディング。
映画でも「彼は言葉という武器を戦場に送り込んだ」というセリフが出てきますが、まさしく感動の演説でした。
チャーチルには功罪いろいろな見方がありますが、名演説者としての側面をタイピストとの対話を通じて表現した、とても良くできた作品だと思いました。
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にしても、辻一弘(カズ・ヒロ)さんの特殊メイクが素晴らしいですね。
ゲイリー・オールドマンってどんな顔だったっけ?って思わずググってしまいましたが、とても同一人物とは思えません。
NHK「映像の世紀」など、”動くチャーチル”は今も様々な映像に残っているわけですが、まるで本人としか思えないです。
数多くのエピソードがあるチャーチルのストーリーはこの映画語もまだまだ続くので、ぜひ同じスタッフで続編を作って欲しいものです!