硫化水素による不可解な死亡事件から浮上する驚愕な真実と事件関係者の思いを描いたサイエンス・ミステリー。
東野圭吾さんの原作らしく、謎の解明や次々と出てくる登場人物の接点が結び付いていく安定の面白さはある。だが、演出・人物の魅力等の脚色は、他の東野さんの実写化に比べると、かなり見劣りする。
開幕からCGが浮いてる。竜巻・煙・廃墟の全てが怪獣映画のようなエフェクトであり、本作のスケールと合致していない。
登場人物の魅力がない。『新参者』シリーズや『ガリレオ』シリーズのようにキャラ付けを行なっておらず、記号にしかなっていない。東野さんの小説は「物語の展開力＝登場人物の心情描写>登場人物の個性」の構成が基本的だから、映像化に当たってキャラ付けしないと画面を見る楽しさがなく、勝ち目が薄い。また、原作未読だから分からないけど、本作の物語は恐らく原作の要点や良さげなセリフを抜き出しただけに留まっている。恐らく、尺の都合もあり、ワンシーン毎に余裕が感じられない。東野さんが生み出す面白さを感じる反面、物語を順番に処理していく感じも否めない。
化学の要素について、『ガリレオ』シリーズのような仮説の立証ではなく、「能力モノ」に近いため、そもそも実写化の勝算がビジュアル的に無かったと思う。また、謎を１つずつ解消するのではなく、ほぼ全てが仮説および推察で物語が進行するため、ズーッと頭に靄が留まる。絵面でストーリーが進行してる感がなく、それ故に物語を追うのが面倒になる。
⭐評価
脚本・ストーリー：⭐⭐⭐
演出・映像 ：⭐⭐
登場人物・演技 ：⭐⭐
設定・世界観 ：⭐⭐
星の総数 ：計９個
