クシーくん

恐竜ガーティのクシーくんのレビュー・感想・評価

恐竜ガーティ(1914年製作の映画)
3.6
ウィンザー・マッケイが「リトル・ニモ」と「蚊はいかにして行動するか」に続き世に放った第三弾。映像作品としては彼の最も有名かつ成功した作品との事。
全体の構成は「リトル・ニモ」と似通っている。漫画家仲間の友人達とドライブに行った折、車が故障してしまう。丁度博物館の前だったので車を修理する間、立ち寄る一行。館内には巨大なブロントサウルスの化石が展示されており、それを見た友人が「天才監督のマッケイも流石に恐竜は動かせまい」とからかう。マッケイ氏すかさず「出来らあっ!」と反論。半年の時間を貰い、夕食代を賭けて恐竜を現代に蘇らせる事を宣言する。半年後、友人一同を自宅に招いたマッケイ氏は、晩餐の余興にスクリーンを用意し、ジュラ期の怪獣を自由自在に操るのであった…。

物語前半はマッケイ氏と友人の実写パート、後半は恐竜ガーティのアニメーションというスタイルこそ変わっていないものの、「リトル・ニモ」や「蚊は~」と大きく異なる点は背景が追加されており、主人であるマッケイの指示に基づきコミュニケーションを取っているということである。それまでのアニメーションはマッケイの作品含めてキャラクターが何か滑稽な動きをしているだけに留まっていた所に、初めて意思の疎通が行われた瞬間である。ガーティは主人の命令通りに足を上げる芸当を見せ、たまに間違え、主人に叱られると大粒の涙を流すかと思いきや、主人の命令を無視したり、時には勝手に行動してマンモスを投げ飛ばしたり湖の水を飲み干してしまう自由気ままさも見せる。とにかく生き生きとしたガーティの一挙手一投足が可愛い。

映画が製作された背景は、物語内で語られるような動機とは少し違っている。前作「蚊はいかにして行動するか」が余りにもよく出来ていた為に、当時の人々にはその製作背景が理解出来なかったものか、写真をトレースしたに違いない、トリックだと言われた。そこでマッケイは写真を撮る事が不可能な古代生物を選んだという訳である。

というのが題材に恐竜を選んだ製作背景だが、そもそもの製作動機はまた別にあるようだ。「ガーティ」のアニメーション部分自体はその前から完成しており、元々マッケイが興行していたボードビルの演目だった。この興行は大当たりしていたが、そちらに専念されて肝心の新聞漫画の仕事が断念されているのを不満に思った雇用主、悪名高い新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストが彼の興行を妨害し、ボードビル出演を禁止してしまった。そこで、このアニメーションに前半の実写パートを加え、劇場公開版として完成させたのが本作…という事らしい。ハーストの狭量のおかげで傑作が世に残ったと思えば結果オーライかな?
クシーくん

クシーくん