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シェイプ・オブ・ウォーターのyutaのレビュー・感想・評価

3.8
まず、全編に漂うノスタルジックな雰囲気(特に街並みや音楽)はこの映画の世界観を創り上げる役割をしっかりとになっていましたし、リアル路線にしたのも良かったです。(その時代の生々しい荒廃した感じが逆に主役2人の恋愛を美しく綺麗なものにしていた)

主演のサリーホーキンスは喋れない役という事で感情をわかりやすく表現していて良かったです。
他にも、オクタヴィアやマイケルスタールバーグの厚みや、リチャードジェンキンス演じる絵かきの優しさと孤独な葛藤も良かったです。
また、障害者、黒人、同性愛者など当時少数派というか差別されていた人達が一丸となり謎の生き物を奪還するシーンはハラハラドキドキで胸が熱くなりました。多分、それぞれ冷ややかな目で社会から見られ孤独を感じていたからこそ、謎の生き物に共鳴したのかなと思いました。(主人公が謎の生き物を好きになったわけも他と違い、ありのままの自分を見てくれるからと言及してたし)

そんな中、美女と野獣でいえばガストンの立ち位置であろうストリックランド(家族いる感じもリアルで良かった)は、異形のものを前にして怪物として抹殺せんとする代表例のような人物。そんな彼をノクターナルアニマルズでは無骨で渋い保安官を演じ、個人的に好きになった俳優のマイケルシャノンが今回も厳しい顔で演じていて、悪役にはピッタリだと思いました。
ストーリーとしては割と、恋愛映画の王道を行っていますが(弊害がある故燃える展開は正しくロミオとジュリエット)人外の謎の生き物との恋愛という事で奇特なものになっていて新鮮でした。
それでも、フランケンシュタインや美女と野獣のように人間と人外のラブストーリーは結構あります。
ですが、シェイプオブウォーターはその中でも中々身体的にも精神的にも深いところまで進んだ気がして、驚きました。でも、鑑賞後はどんな恋愛映画よりも純愛映画だと感じました。

またそのうっとりするロマンチックと少しのおかしさとが同居するシーンもあり、全体的に可愛らしいコミカルな空気が立ち込めていた気がします。(特に白黒のミュージカルシーンなど)
そのお陰もあってかこのタイプの作品にありがちなチープさやなんだこれ感はあまり感じず、水のように優しく包み込まれ優しく終わった映画でした。

シェイプオブウォーターというタイトルも詩的な意味を含んでいてタイトルだけでこの映画の雰囲気や世界観が伝わってくるようで秀逸だなと感じました。
デルトロ監督曰く水は愛というインタビューを聞いて、成る程と合点がいきました。
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