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彼女の人生は間違いじゃないのodyssのレビュー・感想・評価

3.3
【原発事故避難民たちに寄り添う映画】

ヒロインは若い女性・みゆき(瀧内公美)。もともとは福島県の海岸部に住んでいたが、東日本大震災および原発事故で故郷を捨てて、今は同じ福島県浜通り南部のいわき市で避難民用の仮設住宅に父(光石研)と二人で暮らしている。母は津波で流され、今も行方不明。

みゆきは市役所勤務、つまり公務員だが、週末になると高速バスで上京し、そこでデリヘル嬢をしている。父は今も職に就いていない。  

本作品は、この父娘を中心に、他の避難民や、東京に住んでいるが両親は福島県浜通りの出身である女性カメラマン、卒論を原発避難民で書こうといわき市のスナックでバイトをしながら避難民の実態を調べている女子大生など、様々な人物を登場させて、原発事故から5年後の、いわき市に住む避難民の様子やその問題点を浮かび上がらせようとしている。

ヒロインはデリヘル嬢、父は職に就かずにパチンコに明け暮れ、他に新興宗教に走る人もいるなど、避難民たちの実態は必ずしも「震災に負けずに前進しよう」というようなものではない。しかしこの映画はそういう人たちをいたずらに批判するのではなく、人間の弱さをそれと是認しつつ、避難民たちに寄り添っていくような趣きがある。

廣木監督が同じ福島県の郡山市の出身ということも基盤になっている映画だろう。

ヒロインを演じる瀧内公美が、ヌード(デリヘル嬢ですから)を披露していることを含め、頑張っている。

でも東京駅前で高速バスを降りたヒロインは、東京駅もしくはその近くのトイレで着替えをすることにしていて、そこで同業(?)の新潟から通っている女の子と「時々会うよね」と話をするシーンがあるんだけど、新潟と東京を結ぶ高速バスって、東京駅じゃなく、池袋駅か新宿駅に着くんじゃないですかね。細かいことで済みませんが(笑)。
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