ねぎおSTOPWAR

古山子(コサンジャ) 王朝に背いた男のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

4.0
主人公となる金 正浩キム・ジョンホさんは実在して、1861年に韓半島をかなりの精度で調べ上げた『大東輿地図(だいとうよちず)』を完成させた人物。
日本はちょうど幕末です。浦賀のペリーさんって来る前に琉球や中国などに寄っていますからアジアにヨーロッパの外圧がかかるタイミングです。
劇中にも天主教:キリスト教の布教が登場します。遠藤周作の「沈黙」はもっと前の時代のことですが、まあ似た状況ですね。

・・この映画はちょい微妙な部分が関わります。
日本では竹島、韓国では独島(干山島)の帰属、領有権に関わる部分があるので、わたしそこは黙ってスルーすることとします。どうぞ政府間でうまいことやってください。

ちょっと歴史を脚色していると思われるところを先に書きますね。
主人公が干山島に渡るために鬱陵島(ウルルンド)の役所にいますが、ここに役所はないはず。
安東(アンドン)金氏(キムシ)が一族の存亡をかけて争う大院君(テウォングン)はフンソンです。フンソンは王:高宗(コジョン)の父。たぶんこれ1850年代のこと。

鬱陵島には朝鮮人、日本人が行き来していて、この島の領有は争いが続いていました。17世紀には綱吉が朝鮮王朝に対して、日本人渡航禁止措置を出したことを報告もしているんですよね。朝鮮王朝サイドはと言うと、倭寇が朝鮮半島を攻める中継地としていたため、朝鮮王朝は戦略上防衛の意味で立ち入り禁止、無人島にしたんですよね。
その後いうことを聞かない日本人が木材伐採に海を渡ったり朝鮮人も言うことを聞かない人がいました。
ただ、基本的に両国ともに争いをやめるために公式には無人島ですから、この映画のように役所があるわけがない。さらに海賊に民間人が殺されたと朝廷で対策を講じると言うのはやや大げさ。
その後日露戦争を経て植民地化した際には日本領となったが、戦後日本は済州島などとともに鬱陵島の領有権を放棄しました。(ただし竹島という記載はなかった)

あと日本の役人が地図を褒めますがw、日本にも伊能忠敬いますしねぇww
まあリップサービスってことで。

さて映画としては韓半島の地図を作った偉大な人物の話であり、それをチャ・スンウォンさんが演じていますから涙ものなのでは。

ちょうど時代が混沌としていく頃でもあるので、正祖の後に再度腐敗していった王朝の”末路の入り口”がよくわかる映画でもありますねー。


〈493〉

チャ・スンウォン차승원出演映画completed 2023.9現在
filmarks未掲載:「ラブリーライバル」「同窓生」
*日本未公開+ソフト未発売は除く