Fitzcarraldo

リバー・オブ・グラスのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.0
自らの脚本と自らの資金で完成させた30歳のKelly Reichardt監督デビュー作。

おでこのハゲ具合が最高のLarry Fessenden演じるリー。田舎の出来損ないといった風体が素晴らしく、そして作られたキャラという感じはない物凄い実在感がある。

本作では編集も手掛ける多才ぶり。
予算がないから、こういうユーティリティプレイヤーは重宝される。

コンビニ強盗に躊躇しているリーを見て…おい、やれんのか?とつい声を掛けたくなるキョドり顔。

そこへ第三者の男が突如入ってきて横取りされるのだが…ここで満席の劇場から笑いが巻き起こる!素晴らしい反応!

緊急事態宣言発令中も何のその。
オリンピックが無観客なのに、シアターイメージフォーラムは満席という…よくわからないことに…この矛盾は一体どう説明すればいいのだろう…

オリンピック前、最後の強化試合とか観客入れてたけど…無観客は無観客で違和感あるんだけどなぁ。イメフォ満席だしねぇ…空間と密集度からした、イメフォの方が相当ヤバそうな気するけど…

これが許されるなら、オリンピックも観客入れたら?と思わずにはいられない。半分くらいならいいんじゃない?どこかで何かが捻じれてるような気がする。政治と民意と…


映画マラソン3本目なので、見た順番も加味されてか前二本に比べると説明過多な印象がある。デビュー作の拙さなのか?…

Lisa Donaldson演じたコージーのナレーションが、うるさく感じてしまった。

ただラストに薄らハゲのリーを咄嗟に殺してしまうのも、多くのナレーションで説明があればこそ納得いくのかなとも思うのだが…

しかし納得することを別に[良し]とするタイプの監督ではないというのは、この後の作品を見れば明らかである。

デビュー作からのこの変化は、やはり作家のジョナサン・レイモンドとの出会いによるところが大きいのか?

それでも、ジャンルの中の予定調和を崩していくのはデビュー作から完全に体得している気がする。

強盗に入るも、横入りされて殴られたり、銃殺したと思ったら死んでなかったり、夢の逃避行へと高速に乗ったら25セントを払えないでUターンさせられたり…

尽く男のマッチョ体質を裏切っていくのが、予定調和に辟易している自分からしたら、妙に新鮮な気持ちになって純粋に映画を楽しんでいる自分がいた気がする。

明らかに商業映画とは違う。

何が違うのかはハッキリと云えないのだが…

画面から放つ磁場みたいなものが異質なんだよなぁ…なんだろう不思議だなぁ。

4本立てで一気に見たが、きっとケリー・ライカート作品の全てに通底している気がする。
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