カタパルトスープレックス

それからのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

それから(2017年製作の映画)
3.6
ホン・サンス監督がキム・ミニと出合い作風が変わった三作目。

作風が変わった第一作目の『あなた自身とあなたのこと』(2016年)で以前の作家性はそのままでの視点を男から女に変えることにより、大きな変化を遂げました。二作目の『夜の浜辺でひとり』 (2017年)は女性の視点に加えてホン・サンス監督とキム・ミニの当時の状況も反映させた作品でした。三作目となる本作はそこから更に不倫を客観視します。作家性に軸足を残しながら、作品ごとにピボットしていくホン・サンス監督。

本作においてキム・ミニは不倫騒動に巻き込まれる新入社員となります。教授の紹介された出版社で働きはじめたアルム(キム・ミニ)は社長の不倫相手と間違われて奥さんにビンタされる。奥さんに顔を観られていない不倫相手はアルムに罪を擦り付けて社長との不倫を続けようとするのだが……という話です。

これまでのホン・サンス監督作品の主人公だったような社長と不倫相手をキム・ミニの視点で客観的に観察するような形になっています。ホン・サンス監督作品の以前の特徴は前半後半二部構成だったのですが、本作もそれを思わせる場面が出てきます。ここで観客は困惑する。あれ?また以前のパターン?このように以前の作風を逆手に取るというか、これも客観的に風刺するというか。これが本作の特徴だと思います。

このようにホン・サンス監督作品を追いかけている人だったら思わずニヤリとする演出は多いのですが、前二作と比べてあまり驚きは多くなかった。映画作品としては悪くない小品ではあるけど。