アズマロルヴァケル

三尺魂のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

三尺魂(2017年製作の映画)
4.2
この映画、規格外。

・感想

内容はいわゆる世にも奇妙な物語で言うところの『昨日公園』や『さっきよりもいい人』のような内容。映画で例えると『オール・ニード・イズ・キル』のようなよくある時間移動もの。しかし、日本映画では小説や漫画原作ではなく監督自身のオリジナルなのでかなり珍しいほう。

物語はタイムループする度に花火師の城戸を順に自分がタイムループをした経験を味わうようになり、女子高生の希子の気持ちを止めようとする一方で、4人の自殺する理由が明らかになるというもの
。前半は少々笑えるシーンが入り混じっていたものの、後半からは主要キャスト4人の熱演ぶりと共に心臓を抉られるシーンの連続で畳み掛けてくるので自分としては観てて圧倒されられました。

そもそも、真面目な内容なのに笑ってしまったのは津田寛治さん演じる城戸が自殺する理由は重くて辛いものなのに、研修医との会話でボケに回っているので余計クスッと来てしまうんですよね。そして木ノ本嶺浩演じる高村がツッコミに回って真面目な一面を見せている一方で、
後半では高村の自殺する理由が明らかになったときに城戸に体当りしながら慟哭するシーンは高村自身の心の痛みを訴えていて、個人的にはこの映画のなかでは名シーンだったのではないかなと思います。

ラストはあくまでも想像なんだろうと思うけど、女子高生の希子のその後が描かれていてそれぞれ将来の希子に関わっていくところがこれまたグッと来てなりましたし、少なくともエンドロール後のおまけでホッコリさせる作りというのは好みが分かれるかもしれませんが、人間味があって、かつ自殺をやめた後にできた4人の『生きる』という根本的な気持ち、或いは4人が『死ぬ』という意思の表れの無さを提示した点としてはこのおまけは有りかなぁと思っております。

とにかく、今年2018年のなかではかなりメジャーな邦画作品に埋もれてしまっている作品かもしれませんが、言い過ぎかもしれないけど今年ベスト級の映画で、非常に観てて良かったと思える作品ではないかと思うし、今すぐ誰かにオススメしたくなる秀作じゃないかと感じました。