takanoひねもすのたり

籠釣瓶花街酔醒のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

籠釣瓶花街酔醒(2012年製作の映画)
4.0
あばた面の田舎の豪農、佐野次郎左衛門が初めての新吉原見物に行き、兵庫屋の花魁八ツ橋を見初めて通い詰め身請けの話を進めるも、彼女には間夫がいて別れられず、結果佐野次郎左衛門に愛想づかしをしてしまう。それを恨んだ彼は村正の妖刀、籠釣瓶で八ツ橋を殺害する…という話。

序幕の花魁道中がとにかく華やかで見もの。
立ち止まり振り返り微笑む玉三郎さんの艶やかさ。中村七之助さんの花魁七越も美しかった。
佐野次郎左衛門の中村勘三郎さんのくるくる変わる表情、そして八ツ橋の愛想づかしに「花魁そりゃぁそでなかろうぜ」の様々な感情がこもった台詞回し。
そういえば花魁九重は彼に好意を寄せていたのかなあ…彼女の細やかな心遣いが沁みてこの愛想づかしの場はちょっと泣きました。
そして最後の大詰。八ツ橋を袈裟斬りにし、
「籠釣瓶はよく切れるなあ」の虚無と狂気が素晴らしい。

あとは八ツ橋の間夫の栄之丞、片岡仁左衛門さんの色男振り。色気がダダ漏れていた…。

廓というシステムの中で売り物買い物とされる八ツ橋のどうにもならなさ、佐野次郎左衛門の哀れさ。
心にくるものがありました。