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マスクのくりふのレビュー・感想・評価

マスク(2010年製作の映画)
4.0
【あやつり機女―レム原作のクエイ濾し】

《ブラザーズ・クエイの世界/E:クエイ兄弟とポーランドのアニメーション》にて。

以前のサイトでは、プログラムごとの作品ページだったのでまとめて投稿したが、こちらは各作品別なので、個別に切り出して投稿しておきます。よってメモ的です。

…が、ポーランドのアニメは、すべて作品ページ、見つからず…

このEプログラムは、

●クエイ兄弟とポーランドのアニメーションポーランド文化に造詣の深いクエイ兄弟がセ・マ・フォルと制作した『仮面(マスク)』を、ボロフチック、レニーツァ、クチャによるポーランド・アニメの名作とともに上映。

・『家』(ヤン・レニーツァ、ヴァレリアン・ボロフチック作品/1958年/11分)
・『学校』(ヴァレリアン・ボロフチック作品/1958年/7分)
・『迷宮』(ヤン・レニーツァ作品/1961年/14分)
・『リフレクション』(イェジー・クチャ作品/1979年/6分)
・『チューニング・ザ・インストゥルメンツ(弦走)』(イェジー・クチャ作品/2000年/15分)
・『仮面(マスク)』(2010年/23分)

(合計76分/配給:Studio Miniatur Filmowych/Studio-Kadr/Se-ma-for)
…というもの(当時の劇場サイトより)。

『仮面(マスク)』は、数年前のイメージフォーラム・フェスティバルで既にみていたが面白くて、その後再見の機会がなく飢えていたことと、スタニスワフ・レムの原作邦訳が単行本化され、読んだらさらに興味が湧き…ということで行きました。

人工的に生まされた?女が、標的と決められた男と恋に落ちるが…女は●ではなかった。…愛、異形、少しの狂気、からのSF。

物語の豊かさでは原作が圧倒的でした。

今の技術なら緻密なCGでライブアクションの実写版がつくれそう…とも思うが、原作の文章ゆえのブラックユーモアがギャグになりそうだ。そう考えると、パペットアニメによる人形劇、という外観で展開したのは賢いかも。

題材からも、クエイがやりたくなるのはよくわかる。が、ここまで単純な物語にまとまってしまったことには、原作を知った後では拍子抜け。

ヒロインの“人間じみた”葛藤が消え、クエイ・パペットの、もの言うデザイン頼りになってしまった。しかしそれには限界がある。

原作離れしたエピローグの余韻はよかったから、もっと膨らませればよかったと思う。

ペンデレツキの音楽を、ホラー・サスペンス風に生かしたのは効果アリ、と思った。

しかし、不満はあれどもいい話なので、原作と別物と捉え直せば、いい映画であると思います。

<2017.7.24記>
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