Tully

JUNK HEADのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

遠い未来、人類は不老不死を得た代償に生殖能力を失う、一種の等価交換。一見、薔薇色の世界も、けして不死身では非ず。昨今のようなパンデミックには極端に弱く絶滅の危機に瀕してしまう。そこで思い起したのが嘗て自分達が創造し、そして棄ててしまったモノ共の存在。「マリガン」 は地下開発の為に造られた人工生命体。が、やがて進化し自我を持ち、人類に反旗を翻し下層の世界を乗っ取ってしまった過去。でも、彼ら彼女らなら、今でも生殖行為を行っているのではないか。しかしそこは、今となっては未踏の地。探査の為に派遣された主人公が目にするものを我々も共時し体験する。元々は人類と同一の遺伝子であったはずなのにコピー時に繰り返されたエラーにより存在するのはクリチャーとも称したくなるほど多種多様に変容した生き物の数々。カンブリア紀の生物の如く、時としてグロテスクささえ覚えるそれは、弱肉強食の世界に蔓延る。本来の体を失い、加えて落下時のアクシデントの為一時的に記憶すら無くしてしまった主人公は好むと好まざるとにかかわらずその渦中に巻き込まれ艱難辛苦を味わう。一方でそれを助ける者も現れとは、英雄譚ではお約束事。100分ほどの尺では到底語り尽くすことを得ず、本編でのお話は 「To be continued」 となる。旧来からある 「ヒロイックファンタジー」 を根底に、やや既視感のある造形ではあるものの登場させる被造物の面では空想の翼を広げ、山あり谷ありのストーリーに存分に膾炙させる。主人公の設定が特殊の為、彼が遭遇する危機も常のケースには非ず、凡百の想像を超えている。時としてファースとも形容すべき苦難ながらも観客の側の興奮は終幕迄途切れることはない。もっともエピソードの幾つか、例えば 「ドラゴンスネーク」 から吐き出される 「R2-D2」 を彷彿とさせるシーンもあったりで。ただそれが興を削いでいるかと問われればそこまでとは言えず。更に驚くべきは、本作が七年もの歳月を掛け、ほぼほぼ独りの手により生み出された偏執狂的な妄念の産物であること。エンドロールを見れば、鑑賞中に持った疑念の数々 「本当は何人で創ったんだろう」 とか 「セットや登場人物の実際の大きさはどれほどだったんだろう」 とかはかなり明らかに。が、それは、制作のほぼほぼ全部を担った 「堀貴秀」 の労力の一端にしか過ぎず。待望する続編を目にするのは、果たして何年後になるのだろう。過剰に頻出する男根のモチーフが何の前触れなのかの回答も含めて。
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