みかんぼうや

ブレス しあわせの呼吸のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ブレス しあわせの呼吸(2017年製作の映画)
4.0
まるで出来過ぎたヒューマンファンタジーのような実話ベースの物語。ここまで直球な病気&重度障がい者の苦しくも美しい感動ストーリーはいつぶりに観ただろう、と思うほど、王道にして心揺さぶられる作品でした。そして、この作品の製作総指揮をとったのは、あの「ブリジット・ジョーンズの日記」の製作者にして、本作の主人公の息子ということを観終わった後に知って驚きました。つまり、この作品は製作者の実の父と母の半生を描いた作品なのです。

28歳の時にポリオに感染し全身不随によって自立呼吸ができなくなってしまったロビンとその妻ダイアナを中心とした、2人の苦悩、そこから生まれた奇跡、そして重度障害とともに生きることの厳しい現実を描いた物語。

テーマ的には相当重い内容ですが、重度障害を持ちながらもロビンとダイアナが起こす奇跡のようなエピソードに勇気づけられますし、作品そのものもドキュメンタリー調ではなくエンタメ性を大切にしてテンポ良く進みます。全体的には明るく美しい物語ではあるので、重さで押しつぶされるような雰囲気ではなく、非常に観やすい作品でした。

これがフィクションであれば、いわゆる“泣かせ演出バッチリの美しい奇跡の物語”と捉えられかねないほど、前向きさもある感動的なドラマで、本作の主人公は周りの人間たちにかなり恵まれたとはいえ(素晴らしいエンジニアが近くにいたり)、「どんな状況でも希望を捨てずに何かに挑戦する」というシンプルながら物凄く力になるメッセージ性に新年早々背中を押されました(特に、彼ほどではないにせよ、私も障害を持っていますので)。やはり実話の説得力は凄いです。

その物語はもちろんですが、オープニングから魅せてくれる美しい映像と音楽がまた素晴らしく、イギリス映画ではありますが、90年代のアメリカの名作エンタメヒューマンドラマ(「ギルバート・グレイプ」や「グッド・ウィル・ハンティング」や「マイ・フレンド・フォーエバー」など)のような作品全体の雰囲気も魅力的でした。

もちろん悲しい話でもあるのですが、今の自分の悩みなどちっぽけに思える、そして日々前向きな気持ちで生きることを大切にしようと思わされる、素晴らしい映画でした。
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