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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のtsuraのレビュー・感想・評価

3.9
必見である。
ある意味では見逃し厳禁の作品だった。
でも好き嫌いは完全に分かれると思う。

ただ、シンプルに母と娘、2人が住むモーテル管理する管理人の日常だ。
しかし最貧困層の親子の目線で描かれる日常がこれほどまでに…言葉を失うものとは。

あまりにも杜撰な世界の歪みの中で懸命に生きる物語を決して、悲劇のストーリーに仕立て上げてはいないがその淡々と見せる故に私達は自分の立ち位置まで再考させてしまう、なんとも言えない作品だった。

それに"ファンタジー"という言葉は時にあまりにも卑怯だ。

この作品のストーリー内にも隣接するファンタジーのそれは、本来誰もが見てもいい筈の夢と幻想なのに…リアルに介在するのはグリム童話の様な穢れたものでその夢と幻想は、まさにまやかしの様だ。

子供が憧れ逃避した夢の中、しかし現実から逃れられない事を観客は理解しており、その救いの無い、逃げようのない答えと現実に胸が痛くなる。

アメリカ、これでいいのか?

世界はこれでいいのか?

これを声高に叫んだところで、所詮は偽善者だし、それを打ち消す程の解決の糸口を見つけれずただ沈黙するしかなかった。

ブルックリン・プリンス、ヴァレリア・コット、ウィレム・デフォー3人の演技は本当に素晴らしく、その世界の声を体現している。
例えささやかな幸せでも、2人にはかけがえのない物だということを、それを見せてくれる演技はもはやリアルと肉薄していて何故この様な演技や演出がもっと評価されないのか、それはそれで哀しい。
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