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顔たち、ところどころのLCのレビュー・感想・評価

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)
3.8
穏やかな時間だった。

出会う人たちをただ被写体にするのではなく、きちんとその人そのものに関心を持って、歴史として残す姿勢に心を打たれる。
ここで生きていたんだと。

こういう作業って、タフじゃないとできないと思う。
人に物語を見出し、人に語ってもらい、深入りしすぎず、なるべく上下も前後もないように並べる。その中で自分のことも見失わない。体力も気力も必要だ。

人を笑顔にして、人に訴えかけて、そうして旅する2人の距離感が心地良い。
どちらも人が好きなんだろうと思う。多くの人に会い、多くの物語に触れることが好きなのだ。衝突したり笑い合ったりして、本人たちも旅を楽しんでいるのが何よりも魅力的。
そんな2人の会話は聞いていて面白いし、やはり穏やかなひと時を見ている私にも分けてくれる。

若い人が、全体の進路を決めればいい。羊のように。
若い人が全体の進路を決めることが現実どれだけ許されるのか、老若の分断を超えて一丸となる為に必要なものは何か、色々頭に思い浮かべては、並んで座る2人を見つめる。
名もなき人々の美しさにレンズを向ける彼らは、レンズにおさめられなかったものまで大切に抱いて歩いていくんだろうと感じられる。
最期のその時に、できるだけたくさん抱いていられたらと、願ったりする。サングラスをはずして見せてくれた彼のあたたかさも、まるごと。
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