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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のMogMogMovieのレビュー・感想・評価

5.0
ジャケットと韓国の高評価作品という前情報だけで「コメディかな」と思ってみてたら大間違いでした。

1980年の韓国が経験した、光州事件を再構成して描いた作品。

独裁政権から民主主義への移行を阻止しようとした保守派陣営、その"警護隊"と化し鬱憤の溜まっていた兵士と、民主化を求める市民・学生の衝突。

保守派陣営のメディア操作により、光州で起こっていた軍による暴力的な弾圧(鎮圧ではない)の残虐性はメディアでは報道されず、「反社会的勢力、暴徒による攻撃的デモ」と報じられていた。

情報操作を破り、世界にその実情を示したのは1人のドイツ人記者ピーター、そして彼を無事に光州まで届け、連れ戻したタクシー運転手「キム。」

始めは簡単な仕事だろうと思い、ピーターを光州へと連れて行くキムだが、
同じ韓国人同士で殺し合い、傷つけ合う様を見て悲しみと怒りに心を揺さぶられる。

ソウルに待つ娘の為に、ピーターを置いて帰ろうと決めるが、目にした惨事を後にすることはできず…。


キムの表情は、言葉にできないほどの感情を訴えかけてくる。

世界では今も様々なデモが起こり、警察や軍による鎮圧が起こっている。

世界に何が起こっているか事実を知らしめることで"世論"が動く。変わる。そして各者の行動が変化する。

今やスマホ、pc、テレビニュースなど、世界で何が起こっているか意識しなくても情報は入ってくる。

しかし「知らせる」役割を担うメディアあってこそであって、その存在の大きさを改めて思い知らされた。

社会に大きな変化が起こる時、どうしても衝突は免れない。どの国の歴史を取ってみてもそう。そこで残虐な殺戮が起こることも、少なくはない。

事件自体は苦い記憶であったとしても、それがあったから今の社会がある。
他国、他者を知るときに、その歴史も知りたい。そう思わせてくれる映画でした
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