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ライオンは今夜死ぬのakrutmのレビュー・感想・評価

ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)
4.0
ヌーヴェル・ヴァーグの申し子であるジャン=ピエール・レオが自身を彷彿させる俳優ジャン役で出演し、生と死をテーマとしながらも、そこに子供たちによる映画製作というプロットを重ね合わせた、諏訪敦彦監督による作品。『大人は判ってくれない』で鮮烈なデビューを飾った13歳のときから、フランソワ・トリュフォーやジャン・リュック・ゴダールなどのヌーヴェル・ヴァーグ作品に数多く出演してきたジャン=ピエール・レオもすでに70歳を過ぎているが、その正にフランス映画の生き字引的な俳優と、将来の映画界を担っていくべき映画好きの子供たちのコラボによる物語に、諏訪敦彦監督の映画愛が感じられる。また、映画の舞台となった南仏ラ・シオタは、映画の父と言われるリュミエール兄弟が『ラ・シオタ駅への列車の到着』を撮影した地でもある。ちなみに、タイトルの『ライオンは今夜死ぬ』は、映画の中でジャンと子供たちが合唱する歌の題名である。

とにかく、ジャン=ピエール・レオと子供たちの交流が微笑ましい。カメラとマイクを持って街中で撮影している子供たちが、空き家だと思って入った屋敷(ジャンが昔愛していたが何らかの理由で別れた(というかおそらく捨てた)女性の住んでいた屋敷で、そこでジャンは彼女の幻を見るのだが)で寝ていたジャン=ピエール・レオと知り合いになり、一緒に映画を撮影することになるというストーリー自体がもう映画好きにはたまらない。子供たちが話し合って脚本を作っていったり、映像を撮影していく様子はリアリティに溢れているし(実際に即興的な演出をしているのだと思う)、見ていて可愛らしい。純粋に映画を作ることを楽しんでいるような雰囲気がとても素敵なのである。南仏の美しい景色とともに、ぜひとも味わってもらいたい。
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