戦前からの炭坑、台湾から招聘されて残った家族。
そして、今はひとり。
西表島の深い緑が闇に染まったように見える、行き場のない、そして寄り添い合えない魂。
国、言葉、歴史、民族、気持ち。
色々な壁を、立てた側は気付かない、その遮断が残酷で救いのないものか。
西表島に最後に残っていた台湾生まれの女性、その歴史を綴るには今しかない、奇跡のような監督との出逢いだったのではないだろうか。
彼女の孤独が、この七年かけた記録を通じて救われていることを願う。
おそらく残っている資料や情報が、散文的だったこともあり、作品全体が散文的で、漫然とはしている。
それでもここまでまとめ上げる時間と努力もかなりのものだっただろう。