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ホイットニー:本当の自分でいさせてのあんずのレビュー・感想・評価

4.1
世界最高峰の歌姫が48歳の若さで薬物により亡くなったことは、特別ファンというわけではない私にとっても衝撃だった。この映画を観て、変な言い方かもしれないけれど、逆にこんな過酷な境遇で48歳までよく生きれたな~と思ってしまった。ホイットニーは誰より優しく強い人だったのではないか。

『エイミー』のエイミー・ワインハウスとビックリするくらい彼女を取り巻く環境が似ていたし、『ロケットマン』のエルトン・ジョンや『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』のセルゲイ・ポルーニン、『草間彌生 ∞ INFINITY』の草間彌生とも根底に機能不全家族で育ったアダルトチルドレンという共通点があると痛感した。

初めて知ることが多くて、興味深かった。
初めてのテレビ出演は19歳なのに、初々しい見た目とは裏腹に、貫禄十分の堂々たる歌いっぷり。一躍、スターダムに上りつめるが、プロモーションとして作られたお姫様というイメージに苦悩することになる。

『ボディガード』の主題歌、“I will always love you”の冒頭のアカペラはケビン・コスナーによる案で、元々は演奏があったとのこと❗あの後世に残る名曲の冒頭はそうやって出来たんだ👀

その映画のモデルともなったというボディーガードは、外からの敵以外に、自分を自分自身で危険に晒すことから守ることが仕事だからと、ホイットニーの薬物過剰摂取を心配して、スタッフに意見書を提出してクビになってしまったそう。ビックリしたのは、彼が薬物はみんなやっているが、程度が問題と言っていたこと。薬物が当たり前って世界、おかしいでしょ‼️でも、それが当時の現実。

ホイットニーは芸能界に入る前から兄の影響もあり、薬物を使用していたが、飲酒はしていなかった。元夫のボビー・ブラウンは婚前は薬物はやらず、飲酒のみ。この2人が結婚し、共依存のようにどちらも摂取して行き、量が増えて行ってしまう😢

最愛の娘も22歳で薬物により死亡したという事実に悲しくなった。悲劇は繰り返される。負の連鎖は簡単には断ち切れない。彼女もまた、アダルトチルドレンとして苦悩の一生を送ったのだろう。

他にも親友であり同性愛の関係にあったとされるロビン・クロフォードとの関係や両親との確執など、色々な人の証言からホイットニーの苦悩が窺える。

ステージ上で輝く彼女を観ていると、唯一、その場だけが誰からも干渉されず、彼女の口癖であった「本当の自分でいさせて」が叶う場だったから、あんなに優しくて強く、美しく、天まで届きそうな歌声が出せたのではないだろうか。
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