カント

シリアに生まれてのカントのレビュー・感想・評価

シリアに生まれて(2016年製作の映画)
3.9
国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)難民映画祭💡
シリア難民の子供達に未来は有るのか。希望は有るのか。7人の少年少女の目を通してシリア難民の今を伝えるドキュメンタリー。 

鑑賞後にはUNHCR協会の滝澤三郎理事長の講演あり😄

【知っておきたい予備知識】
2010年12月、インターネットやSNSの普及によりチュニジアで起きた民主化運動「ジャスミン革命」
それを契機に、北アフリカや中東で起きた「アラブの春」
それに習って、2011年3月にはシリアの独裁者アサド大統領の政権を奪おうと反体制派が動き出す。しかし軍を掌握しているアサド大統領は武力で対抗。
中東の国シリア。そこにある民族的要因と宗教と、アルカイダとISと、アサド政権を支援するロシアと、反体制派を支援する米仏英軍と、もうグチャグチャの内戦で💦国中に爆弾が炸裂!もう、こんな国で暮らしていくのは無理!とシリア国外へ脱出した400万人のシリア人をシリア難民と呼びます。

▼2015年。シリアから夜陰に乗じて、地中海からエーゲ海を抜ける不安定なタグボート。ギリシャ・レスボス島に漂着した10数人のシリア難民。7歳の少女ラナちゃんは母とはぐれたのか闇の中で涙ぐむ。

同じくギリシャ・レスボス島に着いた13歳のマルワン君。違法に入国した難民をトルコもギリシャも受け入れてくれない。父と一緒に途方にくれるマルワン君。※本作で一番過酷な道程を歩み一番良い着地をするのはマルワン君です。

ハンガリー・ブダペスト。12歳のアラスリ君と14歳のガシーム君。
なぜ今、自分がこんな境遇なのか。大人は誰も答えてくれない。その大人でさえ自分が地球のドコに居るのか分かっていない。

オーストリア・ニッケルスドルフ。8歳のハムード君は離ればなれになった弟に会いたい。
国境なんて、昔の政治家が決めたモノなのに、それを越える事がいかに難しい事か。

14歳のジハンちゃん。ドイツに居るお母さんに会いたい。スマホでテレビ電話して、お母さんの顔を見ても涙で声が出ない。画面に向かってキス💋する母娘がいじらしい。

カイス君。シリア国内で近所のガソリンスタンドが爆発して脳を損傷。父親は既に死んでいる。頭に包帯グルグル巻きのまま友達とサッカーするカイス君。叔父さんはカイス君に父親の死を知らせない。知らせればカイス君は後を追って自殺するから。

▼本作はシリア難民400万人の内、数人の子供達にスポットを当てているが、シリアから逃げられなかった国内避難民550万人は今日も爆弾の脅威に怯えつつシリアに居る。

▼UNHCR協会の滝澤理事長の解説を伺っても難民支援の限界しか見えてこない。シリア難民の子供達に未来は有るのか。希望は有るのか。
▼現在、日本国内には63名のシリア難民が居住しているそうで、本作の上映後その内の1人が登壇して挨拶しました。63名の内13名が学生で、登壇した彼も難民ではなく「留学生」として日本で勉強中との事✨
国連UNHCR協会の「アカデミック・インパクト」と言う取り組みの一環で、微小ながら日本も難民支援に尽力している事を知りました。

▼本作の子供達は、苦しい境遇なれど笑顔に溢れ、尚且つ向学心が有りました。悲観を楽観にする天性のガッツ。教育による明るい未来。
未解決だらけの難しい難民問題ですが、僅かながらの希望の光明が見え隠れする、そんなドキュメンタリー映画でした。
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