エミさん

スウィート・カントリーのエミさんのレビュー・感想・評価

スウィート・カントリー(2017年製作の映画)
2.2
TIFFにて。
歴史ヒューマンドラマ。白人至上主義の無法地帯と化していた1920年代オーストラリア中央部。奴隷のような扱いで働かされていた原住民アボリジニの若者サムがある日、日々受けていた横暴な仕打ちに耐えかねて雇い主の白人男性を射殺して逃亡。主従関係が立ち消えても追われる身となった彼の苦難は、更に鋭く深く彼の心身をえぐってくる。

殺人を犯して全てから逃げることとなってしまった苦難の若者を通して、日常の残忍さと人間の不公平さが伝わってくる。運命というのは何という残酷な仕打ちをするのであろうか…。災いというやつは思いもつかないところから忍び寄ってくる。

映画冒頭では、資本を持っている白人が、やりたい放題の横暴な強者という立場で描かれている。普通なら弱者に感情移入するところだが、弱者が暴力で対抗したことで一瞬、立場が同等になったように見えた。ヒリヒリする赤い大地を彷徨うサムの脳裏には、脈脈受け継がれた原住民の誇りや仲間たちの姿が、しばしばフラッシュバックする。

その後40年余り、この土地では暗い歴史が過ぎていくことを鑑みて、きっと、バッドエンドで終わるんだろうなぁと思っていたが、やはり救いなんてなくて考えさせられるようなメッセージ色のある終焉でした。終始、皮肉なタイトルの意味を考えさせられていたことも、見事な演出だったなぁ〜と感心させられました。